Part3
スレイヤーとマキが、街の見回りを終え、夜になり、街の料理屋でご飯を食べていた時のこと。
「あーん、んー、美味しい」
「美味しいですね、スレイヤー様」
「ホントね、ここにこんな美味しい料理屋があるなんて」
「私も知らなかったです。聞けばここは三年前にできたとか」
「そうなのね、それにしても美味しい。仕事が終わったら、毎日通っちゃおうかしら」
「それはいいですね、その時は是非私も」
「もちろんよ」
スレイヤーとマキが料理屋でご飯を食べていた時、街を一望できる山で、闇式がある準備の為、集結していた。
「…」
スレイヤーとマキがいる料理屋を眺めるミヤ。
「情報によれば、スレイヤーと護衛の剣士は、今あの料理屋にいるそうだ」
「そのようですね、ベータ殿」
「護衛の剣士、そして今のスレイヤーがどれ程のものか、試すか」
ベータは、スレイヤーとマキがいる料理屋に手を向けて、全力の半分程の魔力を手に流し、炎魔法を創りだし、料理屋に向けて放った。
「!」
マキは、突然の殺意がこもった魔力を感じ取った。
「?どうしたのマキ」
「すいませんスレイヤー様、少し失礼します」
「あらそう」
「…」
マキは、その魔力を確認する為、一旦外へ出た。
「魔力の反応は」
マキが魔力の反応を探していると、近くいた住民が声を出した。
「なんだアレ?」
「?」
その方向を見ると、炎魔法が、こちらに向かってくるのを確認した。
「!」
マキは急いでスレイヤーの元まで戻ろうとしたが。
「スレイヤー様!」
戻ろとしたその時、炎魔法が料理屋に直撃し、爆発した。
「っ!」
マキはその衝撃を受け、吹き飛ばされた。
「ウッ…!スレイヤー様!」
吹き飛ばされたマキは、なんとか立ち上がり、燃え上がっている料理屋に戻る為、炎を魔法で消した。
「っ!これで、炎は大丈夫」
炎は消すことができたが、中に入ると、火傷を負い傷ついた者もいれば、亡くなっている者もいた。
「…スレイヤー様…」
その光景を見て、当然スレイヤーが心配になり、スレイヤーを捜した。
「…!」
捜していると、奥の方に飛ばされたスレイヤーを見つける。
「っ、スレイヤー様!」
「…」
火傷を負ったスレイヤー。
「!」
脈を確認すると、スレイヤーは、気を失っているだけで、死んでいなかった。
「…良かった。ひとまず生きてる。…ですがすいません、スレイヤー様、私がいながら」
マキは、スレイヤーがなんとか生きている事にホッとしたが、自分がいながら、スレイヤーを危険にさらしてしまい、自分を責めた。
「隊長!」
そこへ、近くにいた魁平隊員が料理屋に入ってきた。
「!良かった。スレイヤー様をお城へお願いします」
「!分かりました。隊長はどちらへ」
「私は、魔法を放ったと思われる場所へ行ってきます」
「分かりました。お気をつけて」
「はい」
マキは部下にスレイヤーを預け、魔法を放ったと思われる山に向かった。
「…(確か、あそこから)」
山に着いたマキ、上にあがるが、そこに闇式の姿は無かった。
「…犯人はいませんか」
そして、マキは放ったと思われる位置に着いた。
「ここから魔法で(確かに、確認した所、あの角度なら、この位置からで間違いない。それにこの場所なら、私とスレイヤー様がいた場所もよく見える)」
「(隊長!)」
部下からテレパシーで連絡がきた。
「!(どうしました?)」
「(スレイヤー様の治療が終わりました。なんとか無事です)」
「(ホントですか!それは良かったです。私もそろそろそちらへ戻ります)」
「(了解しました)」
「…」
犯人が気になったが、近くにはもういないと確認した為、捜索は、スレイヤーの無事を確認した後にすることにした。
「…」
山を降りるマキ。
「(ひとまず、スレイヤー様が無事で良かった。でも、本来の私なら、きっと防げた、のでしょうか)ウッ…ハァ、ハァ…(炎を消しただけなのに、確かにたくさん魔力は使いましたが、私って、こんなに力が無いのですね)」
マキが少し地面に膝をついていると、前から来た人から声をかけられる。
「どうかしましたか」
「!」
顔を上げると、一人の少女が立っていた。
「(いつの間に、気づかなかった。剣?剣士でしょうか)」
「とても疲れていますね」
「えーと、少し魔力を使いすぎてしまって」
「そうですか。らしくないですね」
「え?」
「本来なら、もっと力があるはずなのですが」
「えっと、何を言って…」
「そうでしょう、紅の剣士」
「!?え…」
「いや、マキ、そう呼んだ方がいいか?」
「貴方、魁平隊の人では、ないですよね」
「あぁ」
「では、一体貴方は…」
「タムラの娘、その情報は伝わったかな?」
この少女の正体は、ミヤだった。
「!?それをどこで」
「あの情報を伝えたのは、私だからな」
「!?なんで」
「なんで?さっきも言っただろう、紅の剣士と」
「それは…」
「…まさかとは思うが、忘れたのか?十年前、私の村を焼き滅ぼし、多くの村人を殺した。私の父も…その時、貴様は紅の剣士と名乗っていた」
「!?」
マキは、ミヤから伝えられ、洗脳され、ミヤの村を滅ぼした事を、今思い出した。
「…」
「思い出したか。でもまさか、忘れていたとはな。私の大切な人を殺しておいて……いや、私だけじゃない、他にもたくさんの人を殺してきておいて、貴様はのんきに、この偽りの平和の中で、気楽に過ごしてきたのか」
「それは…」
「なんだ、この期に及んで言い訳か?」
「…」
「まあ、今更何を言われようが、貴様に復讐する気は変わっていないがな」
「…」
マキは前に、アスタと言う少年に出会い、これから生きていく中で、スレイヤーと共に償っていくと誓った。
誓いの言葉は忘れたことはないし、もちろん償っていくつもりでいた。だが、タムラの娘であるミヤに言われ、ここでマキは初めて、償うというホントの意味、重みを思い知らされる。
ミヤに言われた言葉、その言葉に、マキは何も言えなかった。
「まあ、今回は貴様の事を確認する為だけに来た。ここで戦う気はない。だが、貴様にはいずれ死んでもらう。私が貴様に抱いているのは、殺意だからな。その時まで、貴様は精々、今までの行ないと深く向き合い、考えるんだな」
そう言い、ミヤはマキから離れ、歩いて去っていった。
「…」
マキは、膝から崩れ落ちた。
償っていくのは簡単ではない、そう思っていたが、ミヤと出会い、より償いの重みを知った。
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