第9話 視線の先

俺はさっきから女の視線が気になって何も手につかなくなっていた。

アパート2階の俺の部屋を、ただじーっと下から見上げている。


辺りは真っ暗だが、女は白い服を着ているからよく目立つ。


明らかにこっちをみている。

自意識過剰になってるのではないかと視線の先を確かめても、やっぱり目が合うのだ。


俺に好意をしめしているのだろうか。


気が付くと手に汗をかいている。この状態を長引かせるのは精神に異常をきたすと思い、俺はカーテンを閉める事にした。


こっちはいい迷惑だ。明日は大事なテストだというのに。


だがカーテンを閉めるのにも勇気がいった。


相手もこんなに見つめているのだから俺が気づいてる事くらい分かってるはずだ。

そんな中、カーテンを閉めたら見られてるのが嫌だと思われて何をされるか分からない。


あぁ、カーテンを閉めなくてもそのまま寝ればいいんだ。

そうだ、はやく寝よう。


変な女のせいで明日のテスト勉強も途中で終わってしまい、何だか胸糞悪い気分のまま眠った。


だが、それから俺は何ヶ月か経ってこの事を知った。


視線攻め女は、夜な夜な窓を通して若者を朝までじーっと見つめる幽霊らしい。

男をみつめる場合は女に、女を見つめる場合は男に変身する。


もし若者がカーテンを閉めた場合は、その者は一生異性と縁を切り、閉めずにただ朝を迎えれば異性の目を惹きつける事ができるそうだ。


今はこの幽霊のおかげで出来た彼女を精一杯大切にしようと思う。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る