第6話 水星のリオーン 2

―ダークプラネットとの死闘の末、オレは広大にな光に包まれた。


こんなものすごい体験をして、なぜかオレはまだ生きている。


「おい、てめぇが太陽の光を奪ったのか!」


玉は何も喋らない。


「おいきいてんのか!」


すると、


「フ、まぁそんなカッカしなさんな。さぁはじめましょう、最後の戦いを。」

「えっ、ちょっとまっ…。」


オレとリオーンは慌てて身構えた。


「はやく変身しなさい。私がその後戦いやすい所にうつします。」


オレ達は急いで変身した。


(はは、これでこのボタンを押すのもアレかな。最後なのかな?)


そんなことを思いつつ、オレはボタンを押した。


たちまち巻き起こる疾風と光の嵐!


オレは吸い込まれてゆく感覚にただただ身をまかせた…。


次の瞬間、オレはまっくら闇に佇んでいた。

いや、それはいつもと同じことだ。だがちがう、透けた視界の向うもまた真っ暗なのだ。


だけどまばらに小さい玉の数々が浮いているのが分かる。


(リオーン、ここは…。)


(あぁ、宇宙だ。)


オレはその時なぜか鳥肌がたった。


「あぁ、今オレ宇宙にいるのか。」


と訳も分からず感動していた。


しかしその後おれは恐怖した。


オレは気付いたんだ。

小さい星々のどれもが、狂気にひずんだ表情で笑みを浮かべているのを!


前方をみつめると、相変わらず火の玉はぽつーんと宙に浮いていた。


(くるぞ、ユウヤ!)


みると猛スピードで何かがとんできてる!?


オレはもうよけなかった、いや避けなかった。


(うわーっ、なんだこの感覚。あついな…。)


などとぼやいているとリオーンの声が。


(おい、自分の体をよくみろ!)


オレが下目に体をみやるとなんと上半身から下がとけていた。


(うわぁ~、なんてこった。)


だがそんなのんきなことも言ってられない。


オレにはこんなときのために練習しておいた技があるんだ。


こんなところで死ぬかよ。


オレは最大限に集中力を高めた。

これは武器や空を飛んだりなんかよりよっぽど集中力がいる。


オレが集中力を高めてる間、なにやらヒソヒソと笑い声が聞こえてくる。


それは次第にうるさくなりはじめ、やがてはゲラゲラという大きな笑い声になっていた。


ちくしょう、クソ星たちどもめ…。


それにしてもどうしたものか。

たった一瞬でこれならもう終わりじゃないか?


そんな事を考えてるうちに、


(よし、きた!)


オレの上半身の断面部分から、ブヨン!と唐突に下半身が飛び出した。


(やるじゃないか、ユウヤ。)


(へへ。)


太陽の形をしたそいつは、復活したばかりのオレに何一つ容赦しなかった。


お次はズドドドーッと何かがこちらに降り注いでくる。

よくみるとあの星達だった。


(よし、こっちだって本気をみせてやる!)


巨人の体を丸いシールドがつつみこみ、星のマシンガンをはねのける。

次にオレはシールドをはなすと超高速で加速をしはじめる。


太陽のやろう周囲を光の速さで移動し撹乱する!

それにつられて来る星達を引き寄せては離して、を繰り返す。


そのとき!背後を向き水星バズーカ砲を背後にくらわした。


移動しながらバズーカをつくりあげていたのだ。


これでオレを追う奴は跡形も無くなったはず…。


すると突然太陽は怒り狂ったかのように笑い出したではないか!


「アッハッハッハッ!」


その声は宇宙の隅という隅まで届きそうで、女の悲鳴にも男の断末魔のようにも聞き取れた。


太陽はドロリと宇宙の上でとけ、やがて暗黒へとすいこまれてゆく。


(もしや…。)


オレとリオーンは息をのんだ。


ただちに空間はくぱーっと口をあけた!


(しまった!太陽は仮の姿、敵はこの宇宙全体だったんだ!)


ものすごい轟音とともに、その口は大きく息を吸い込みはじめる。


口のむこうは、絵の具とえのぐが混じったように時空と時空がまざりまくっていた。


しかもそこは照りでりしい黄金色に光っている。


「リ、リオーン!もう終わりだ、何もかも!」


(…。)


リオーンは答えない。


「リオーン!」


すると、


(おいきさま!お前はその程度の男だったのか。


見そこったぜ。


お前がせおっているものは何だ!


今全宇宙はお前の手にかかってるんだあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあ!)


オレはその言葉で目が覚めた。


ありがとよ、リオーン。


オレは背負ってたものが落ちたような気がして、楽になった。


一瞬で今までの事があふれ出し、心の奥がなんかドバーッとなった。


リオーン、あんた言ったよな。


基本的にこのロボットは念じれば何でもしてくれるって。


もうオレは手から水星バズーカを手放していた。


巨人の体はもう口の真ん前まで吸い寄せられていた。


オレは最後に、強く願った。


(オレは宇宙を救いたい!)


と。


次の瞬間巨人の体は大きく光った!

それは最初は豆電球ほどで、どんどんと、そして限りなく大きくなっていった。


しまいには全て包んだ。


オレは叫んだ。


「オレは宇宙戦士リオーンだ!!」


と。

気がつくとオレは包帯まみれで病室の中にいた。

隣には西村さんがりんごを鼻歌を歌いながらむいている。


あのあとオレは天からものスゴい急スピードで、おばあちゃん家に屋根を突き破って落下してきたらしい。


オレはリオーンが最後の力で送ってくれたのかなと思っている。


太陽はもとにもどってる。

窓からふく爽やかな風が気持ちいい。


あの野郎、勝手にいなくなりやがって…。


いまでも空のどっかから見守ってくれてんのかねぇ。


オレは空をみつめて、そして一人ほくそえんでみせた。


別れの前に一つ聞いておきたいことがあったんだけどなぁ。


オレはオレなりのヒーローになれたかなぁ?


なぁ、水星のリオーン?







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