普段は会社で普通に働く社会人の、神崎玲。そんな彼の週末の楽しみがキャンプ。山にテントを張り、たき火で調理をし、時には山に登り、温泉にも入る……全部一人で。
誰にも邪魔されず、気を遣わずにいられる時間こそが現代人に与えられた最高の癒しであると、有名な偉い人も言っていたがソロキャンプにはこうした癒しの時間で満ちているのだ。
それなのにそんな彼に積極的に絡んでくるのが、会社の先輩である天道明日奈。神崎と同じくアウトドアを趣味とする彼女は、一緒にソロキャンプをやろうと誘いかけて来るし、それどころか神崎がソロでキャンプ場や登山に来ている時もスルリと合流してくる。
この二人が山でアウトドアを満喫する様子が非常に楽しそうで、合間合間に山やキャンプ場での実践的な知識が披露されるのも大変参考になる。
また安易にイチャイチャしすぎずに互いを尊重しつつも一定の距離を取る二人の空気感が絶妙で、この節度のある距離感がアウトドアの楽しさをより純粋に伝えてくれるのだ。
(「山を登る人々」4選/文=柿崎憲)