第76話 三善結生子(大学院学生)[1]
見つけた!
いや、あふれるぐらいまでお湯を張るなよ、だってもったいないじゃない……。
というより。
そんな日本のお風呂みたいなのが、古代ギリシャにあったのか?
そんなよけいなことまで考えたくなるほど、結生子は嬉しかった。
見つけた。
さっきの「
だからフロアの流しになんか行かなくてもいいのに……。
それで、勢いで書いたレポートの直しをちょっとやって、また『
さっき調べたところで、第九代の藩主
もちろん、「
ところが、これは、この聞き書きの、そして「明治版のネット掲示板」みたいな性格のある『
当時の武家や町人の日記、『向洋史話』よりもこの時代に近い時期に書かれた回想などに、その話が出てくる。
行稚は、
その証拠には、顔かたちが若いころの讃州易矩にそっくりだ。
それをこの『向洋史話』はどう扱っているだろう。
こんなネタを、ネット掲示板みたいなこの本が逃すわけがないのだが、
この行稚が登場するのは、
それも、その部分のわりと最初のほうに。
そこで、「玉藻姫騒動 下」のページを最初から開いていると、ふと「
ああ。あのひとだ。
こんどはどういうホラだろう、と思って、ページをめくるのを中断して、読む。
「岡下の麩商の某氏は言った。権勢を極めた相良讃州易矩の治世に悪い
……。
見つけた。
最初は、こんなにあっけなく見つかるものなのか、と、思っただけだった。
でも、ここまで、この分厚い本の下巻の後ろ半分を読み、スクロール三画面分のレポートを書き、
塔頭というのは寺院の中の小寺院だ。
永遠寺のなかにあった小寺院が焼けたという。そして、それが讃州易矩の治世のケチのつき始めだった、というわけだ。
そうだ。先に進もう。
気を引き締める。
この火災の跡地が、
こういうばあい、違う、という答えになる可能性のほうが大きいと、結生子は知っていた。
何を通じて知っていたかはよくわからないけれど、知っていた。
もう少し読んでみる必要がある。
「
いきなりがっくりする。
海鼠ぉ……?
海産物は千菜美先生の得意分野で、結生子はあまり知らない。
でも、そういえば、正体を見抜かれる危険を
地味な青い色、真っ黒、そして暗い赤いのもあったが、黄色に近い派手な色のもあった。つまり海鼠にはいろんな色のがいるのだ。
たまたま、その明るい色系のがいっぱい入荷したのだろうけれど……。
この日に高い値をつけたら不吉なことが起こったからと、次からはそういう色のが来たら安い値で買いたたいたりしたのだろうか。
炎や血の色だから不吉と言われたら、海鼠にしても災難だろう。いや、そんな理由で安く買いたたかれたら漁民はたまったものではない。
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