第14話 悪い奴ではないんだが(ダリル)
「ダリル村長、朝からすまん」
朝、村役場の二階の執務室につくなり、そう言いながらジールがやってきた。
このパターンは…
「で、今度はカイの奴は何をやらかしたんだ?」
「その前に『秘密の相談の魔方陣』つかってくれないか?」
『秘密の相談の魔方陣』
沈黙の魔方陣とも呼ばれておる。
儂がダンジョンダイバーだったときに見つけた魔方陣で、起動するには魔石が必要。小魔石でも四刻ぐらいは使えるし、途中で魔石を抜けば魔石が少し小さくなって戻ってくるので、今回の分だけで魔石がなくなるとは思わないが…。
「カイに経費をもらいたいぐらいだな」
「あああああ、すまん。俺とグリューとアシアナちゃんと村長で折半するのでどうだ?」
「折半というと二つにわけるみたいだな。四等分だろ?」
「いや、折半。俺とグリューとアシアナちゃんで半分、村長が残り半分。魔石高えし」
「…なるほど。よかろう。折半で」
そういうとジールは銅貨五枚出してきた。グリューとアシアナの分も立て替えるのじゃろう。
小魔石はいろんな生活に必要な魔方陣に使われるので、小銀貨一枚で入手できる。売るときは銅貨三枚なので、残りの経費などがギルドの運営費や隊商の輸送費に分配されてどの地でも小銀貨一枚で買えることになっている。
儂の手持ちはまだまだダイバー時代に自分で取った物があるので、折半でも売るより得するからな。
時々、隊商からも買っているからばれてはいないが。
小魔石を出してきて魔方陣を起動する。
これでこの部屋の会話は外には漏れないし、部屋の扉もこちらから開けないと開かないようになる。
「で、今度はどうした?」
「あいつ、一人で寝るときは浮いてるらしい」
「はあ?」
「ノンナさんがベッドで寝た形跡がないって言ったから…」
昨日の夜ノンナさんに話を聞いたギールはその足でカイがもう寝ているところをたたきおこしてカイの家に泊まったらしい。もう秋も半ばを過ぎ、少し寒くなってきた時期なのに、毛布一枚借りて床でいいと言って部屋に泊まり込んだ。
カイは眠そうにしていたが、ジールに押し切られて、とりあえず長椅子を部屋に持ち込んで、そこにジールが横になったのを見て、自分もベッドに入ったらしい。
ジールが息を潜めているとカイの寝息が聞こえてきたと思ったら、何やら変な感じがしたので、そっと毛布の下で明かりの魔方陣の入った魔道具を使ったら、カイが指一本分ぐらいベッドから浮いてふわふわしていたらしい。
今朝その話をして聞いてみたら、里にいたときに浮遊の魔法をかけていたらしく、周りに誰もいないか、身内しかいないときはぷかぷか浮くようにしていたという。今朝のうちにその魔法は解除させたらしいが、他にもいくつか条件で自動実行する魔法をかけたような気がすると言っていて、とにかく全部解除しろと言ったが、命に関わる物は解除できないと言ってきたという。急に獣に襲われたときに自動的に身体強化、速度強化がかかる魔法とか。
「あいつ、絶対に隠す気ないと思う」
爪を噛んでブツブツ言っている。
「お前は愚痴をいいにきたのか?」
「いや、いつものように、あとは村長に託そうと思って。あとはよろしく」
そう言うとジールはそのまま帰って行った。
まったく、こいつも俺に押しつけていくのか?
カイがイケーブスに来た日、儂はイケーブエの村長との会合を終えて帰路についていた。
イケーブエからイケーブスまで丸二日かかる。途中で二泊してイケーブスに帰ることになるが、今回は馬車二台使って六人で移動するからゆったりとした旅程を組んでいた。
休み休みのゆったりとした旅程でも明日にはイケーブスまでつくと思われた昼過ぎに村の方から誰かが馬でやってきた。肉屋のラルゴの妻のネリアじゃった。
肉屋のラルゴとネリアは狩人のハルとノアが活動しなくなってからも、しばらくは自分たちでうさぎや鳥を狩っていたが、最近はオオカミが増えて危険だからと狩りにも行けず、休業状態じゃった。
村人に仕事を与えるのも村長の役目と思って、ラルゴには儂の手伝いをしてもらって、今回は護衛兼サポートとしてイケーブエにも来てもらっていた。
ネリアが言うには狩人が一人やってきて、昨日大量の獲物を狩ったらしく、村中で肉祭りになり、昨日からずっと肉を保冷庫に収めていたが、肉屋の保冷庫も一杯で冒険者ギルドの氷窟まで肉があふれかえったそうだ。今朝はその狩人は街道沿いの草の処理をしてくれていて、そのおかげでオオカミの気配が街道沿いには薄くなっているらしく、朝から馬で早駆けしてきたとのこと。
「とにかく解体はしたけど、肉を早くばらしてうれるようにしないといけなくて、ラルゴだけでも先に村に返したいの」
そう言いながら、馬に安ものとはいえ下級のポーションを飲ませておる。これは相当急いで村に返したいんじゃろう。ネリアがこちらに残って、ラルゴが代わりに馬に乗って村まで帰ることにしたらしい。今は日が長い季節じゃ。早駆けすれば日が落ちるまでに村まで帰れるじゃろう。
「ネリア、そんなに腕のいい狩人が来てくれたのか?」
「あたしもちらっとしか見ていないけど、見た目はすごく若い子だよ。背は高いけどね。でも昨日一日で
鳥とうさぎはものすごい数だったし、シカとイノシシと熊まで倒していたよ」
「なんと!!」
あの森に熊がおるのは知っておったし、最近うさぎや野ねずみも増えておったから、熊も増えてもおかしくないと思っておったが、街道近くでも狩れるようになっておったのか。
「おぬし、そんな熊が出るような道を一人で駆けるのは危険ではないか?」
「いや、熊は森の直前だ言っていたよ。森のそばまで行ったみたい。昨日はギルドの二点鐘が打ち鳴らされてね。それで手の空いてるみんなで解体したけど手が足りなくて、ダンダさん、ノンナさんまで手を借りたのに、無理ってなって、ダンダさんが狩人止めてこい!って叫んでたよ。アシアナちゃんも今日と明日は狩りは禁止と言っていたね。もうみんなヘトヘトだったよ」
「それはすごいのお」
「それで昨日は肉祭りよ!」
それを聞いて儂と一緒にイケーブエに行っておった若い衆が肉祭りの様子を聞きたがって、そのあとはずっと肉の話をしておった。
しかし、あの草だらけのところをかき分けて行って、森のそばまでか。気配からすると相当な数の獣たちがいたはずじゃ。もう少し放置したら森が魔化する危険性があったが、それを狩って森のそばまでとは。しかも、ダンダとノンナが解体が間に合わんペースでとは、恐れ入る。
有望な狩人が来てくれたと思ったが、戻ってすぐに頭を抱えることになる。
まさか、こんなにも世間知らずだったとは。
村に戻ったら、狩人組合のアシアナがカイを連れてきた。
イメルダの紹介状を持って。
書かれた内容はたいしたことではないが、世間知らずと書いてあるのが気になった。
腕の方は前日の成果を聞けば全く問題が無い。むしろ、解体が間に合わないので、狩りを止められていた。自分で解体する分だけ狩ってはいけないか?と言ってきたが、氷窟もいっぱいと聞いたので、しばらくはこのペースを守れと言った。
だが、三日に一回でもとてつもない状況で、隊商が来て腸詰めや燻製や干し肉を買ってくれないと村中で肉があふれてしまうと危惧するぐらいだった。
そして、問題の世間知らずの方はすぐにジールが話しに来た。
普通に魔法を使う。
一応、隠そうとはしていたみたいだが、ジールにはばれたと知って、遠慮無く使う。
ジールはこの村の出身で、この村からほとんど外に出たことがない。隣のイケーブフやイケーブエぐらいは行ったことがあるのと、成人したときに一度だけケーブの町に行ったぐらい。外に出るような用事の時はだいたいグリューやドリンが受けておったから。
そういう意味ではジールも年齢の割に世間知らずなのだが、それでも魔法が特殊な物で、迷宮都市から出てきたアイテムや魔方陣を使ったものが流通するぐらいであること、個人で魔法を使える者はまれに存在するが、そういった者は強者でなければ囲い込まれやすいこと、そのため、魔法持ちはそれを秘することが多いことぐらいは知っている。
そして、いくらカイが腕の良い狩人とはいえ、目をつけられたら危ないレベルであることも。
この村にもいくつかの隊商が月に一度ぐらいやってくるし、隊商の護衛には腕の立つ者も多い。カイは護衛に混じることぐらいは出来そうだが、抜きん出た護衛というわけでもないレベル。おまけにその護衛達よりも迷宮都市のダイバー達は遙かに強い者が多い。
ジールはこの村で何でも屋のような仕事をしているが、護衛が来たときに短剣の腕を磨くために教えを請うこともある。護衛達からダイバーは遙かに強いことも聞いている。そして、先日の狩りの日や狩りの日の合間の作業などでカイの腕も把握したのだろう。
それを聞いて、儂は隊商が来る日にカイに森の方に狩りに行ってもらったり、何かと用事を頼んで、隊商と極力接触させないようにした。
初夏から秋にかけてこの村を訪れた隊商は五組。
もちろん丸一日森にいたとしても夜には隊商と接触するので、グリュー、ジール、ドリンに頼んでおいた。
誰かしら隊商とカイが接触するときに一緒についているようにと。
カイは隊商で値切ることを知らないらしく、グリュー達だけではなく、ノンナやネリアもカイのことを気にかけていたようで、今のところ隊商と一緒の時にカイがやらかしたことはないらしい。
ただ、村の中では何度かやらかしている。
儂も一度目にしたことがある。背負い袋から出すふりをして、あれは収納魔法から物を出しておった。すぐにカイを呼び止めて人のいないところに連れて行き注意したが、うまくやっているようでも見る者が見ればあんなものはすぐわかる。
カイが来てからのここ数ヶ月、何度かジールが儂のところ来たし、儂も注意を続けてきたが、ここまで続けると言うことは緊張感がないし、何が起こるかの実感がないのじゃろう。
まったく、こんな坊主を儂の村に紹介するとは。
確かに村のそばはかなり危うい状況であった。腕の良い狩人は喉から手が出るほど欲しかった。じゃが、このままでは厄介すぎる。
イメルダめ、もうちょっと教育しておけば良いものを、儂なら面倒を見るだろうと思って、押しつけよったな。あれは昔から儂に無茶ふりばかりしおる。こちらの方が年長のベテランじゃったというのに、パーティを組んでいたときは遠慮無く敵を振ってきおったしな。昔から儂はあれのフォローばかりしているようじゃ。
しかし、考えておっても仕方ない。カイを呼び出すとしよう。
今日は狩りのない日で、カイは森の整備に行く予定だったらしい。ただ、今日でなければと言うわけでもないため、昼前には儂のところに来てくれるとのことだった。
下草を狩ったり、腐りかけた木を伐採したり、手をかけることで森は豊かになる。もちろん奥地や森から奥に続く山までは無理だとしても、草原から少し入った辺りを手を入れておくだけで、臆病な獣は外に出てくることが少なくなるし、恵み豊かな森であればそもそも動物たちが外にあふれることもない。雑草で満ちていた平原も適度に手入れされ、今では所々に薬草や香草が生えて、村は秋の恵みに満ちている。これもすべてカイが来てくれたおかげではある。
カイは村の周りにあふれそうになっていた獣を狩り、平原の草をせっせと草刈りし、森の中の手入れを始め、安全な場所をグリューやジールに伝えた。安全になった場所はグリューやジールの手動で村の手の空いている者たちが当番で手入れを始めた。皆、今回のことで平原や森の手入れがいかに大切であるかを思い知っていた。
そうして恵まれた村を維持するのが儂の役目。時には耳が痛くなるような話もしなくてはならない。そして、村長の執務室に置かれた金庫の中から一つの腕輪型の魔道具を取り出した。
ノックの音がした。
「ダリル村長、カイです」
「開いている。入ってくれ」
入ってきたカイは腰に長剣をつけて、背中にいつもの背負い袋を背負っているが、さすがに弓矢は置いてきたようだ。
「そこにかけてくれ」
部屋の右手には客が来た時用のローテーブルのセットが置いてある。普段、村の者は苦情や陳情など、言いたいことを言って帰って行くので、ここに座ることはほぼ無いが、今日はちゃんと話をしたい。
「ロク茶でよいかの?」
「ありがとうございます」
ロク茶を入れてカイに勧める。まずはお互い一口飲んで、肩の力を抜く。
「朝からジールが儂のところに来おったぞ」
カイは少し苦笑いだ。今朝のことを思い出したのだろう。
「別に寝るときにどうしていようと儂には関係ない。ただ、話を聞いて一つ気になった。カイ、おぬし、自分にかかっている魔法をすべて憶えておったのか?」
「…」
「寝る間の魔法など、自分で意識しない時間のことじゃし、忘れておったのではないか?」
そう言いながら、カイの表情を見逃さぬようにじっと見据える。少し下の方を向いている。指をせわしなく組み替えていたかと思うと、鼻の頭を指でこすって、また指を組んではせわしなく動かす。落ち着きをなくしているように見えるが、わかりやすすぎる。
「カイ、意識しているときは使わないでいることもできるはずなのに、完全に使わないわけでもなく、使って儂に見つかっておる。おまけに無意識のときにかけたことを憶えきってもいない。おぬし、自らの危うさにきづいておるか?そして、それが村の者を危険にさらしかねないことも」
そういうとうつむいていたカイは、顔を上げて儂の方を見た。
「アガサは知っておるかの?解体の時に手伝ってくれる奥様方の一人じゃ。知っておろうな。何度もあっておる。そのアガサの息子が明るい茶髪じゃ。見る者によっては赤いとみる者もおるじゃろう。十五歳ぐらいの赤毛の若者とだけ聞いておったら、おぬしと間違えるかもしれん」
「それは…」
「のお。カイよ。儂は村長じゃ。この村を平和に安全に維持する必要がある。おぬしが村に来てくれたのはうれしい。おぬしが来たばかりの頃のこの村はひどかったじゃろ?心より感謝しておる。秋の実りもしっかりと確保できそうじゃし、この冬はみな豊かに過ごせるじゃろう。皆、おぬしに感謝しておる。今なら皆おぬしのことを隠してくれるじゃろう。だがのお、人の口に上る言葉は隠そうと思っても隠しきれるものではない。今のままなら、いずれおぬしの狙う者がこの村にくるかもしれん。おぬしは戦えても、抗えても、アガサの息子がさらわれるやもしれん。いや、村の小さい子供達を人質に取られるかもしれん。おぬしの才は今のままでは村をも危うくするのじゃ。わかるか?」
儂の言葉とともに一度顔を上げたカイは唇をかみしめて、またうつむいた。
儂は執務室の窓から庭を見下ろした。役場の隣に儂の家があり、庭では孫が友達と遊んでおった。
「目立つことなく、平凡に、豊かに。それはつまらぬ生き方かもしれん。じゃが、その普通の安らかな日々がいかに大事なのか、この村の皆は思い知っておる。そしてそれは一度でも危ういことが起これば、危険をもたらした者への怒りに通じるやもしれん。怒りというのは不愉快な感情じゃ。一度怒ってしまうと、それを悔いて、そのように悔いさせた者に対してまた怒りを感じる。それを何度も続けて薄まるまでの間、人は幾度も不快な思いをする。それを乗り越えられれば新たな絆を結べることもあるが、怒りをきっかけとして永遠に途切れる絆もある。この村は決して大きくない。小さな村では助け合いが大切で、そのような場には大きな怒りをそもそも持ち込ませないことが大切なのじゃ。儂はそう思っておる」
そういうとカイをうながして二人で窓の外を見下ろした。
「儂の孫とその友達じゃ。儂にはあの子達が穏やかに過ごせる環境を作る責任がある。そして、この村のすべての成人にもその責任がある。儂はそう思っておる。そして、この村に住む以上、おぬしもその一人であるはずじゃ」
少し遠くを見るような目をして子供達を見つめるカイ。きっと儂の言いたいことは伝わっておるじゃろう。
「俺はこの村を出る方がいいのか?」
「そのようなことは言うておらん。落ち着いて茶でも飲め。まだ話は終わっておらん。茶を入れ直そう」
カイをもう一度椅子に座るようにうながすと儂はロク茶をもう一度入れ直し、茶をカイの前に置き、その横に腕輪を置いた。
「腕輪じゃ、まずはそうっと触ってみるが良い。腕にはめてはいかんぞ」
銀色のシンプルなデザインの腕輪じゃが、小さな黒い石が一つついておる。カイが恐る恐る指を伸ばすとまだ触っていないのに、バチッと音がして腕輪が何やら光を発した。
「この腕輪は?」
さすがに何やら感じたようじゃの。
「魔封じの腕輪じゃ」
「まふうじ?」
「さよう。おぬしも知っておろうが、ときどき変異的に親も親戚も魔法を使えないのに、魔法が使える子が生まれてくることがある。その子達はいつどこで生まれるかもしれん上に、大概何かしらの問題を起こす。最も多いのは火事じゃの。そこで、迷宮都市の圏内の町や村の長のところにはこの魔封じの腕輪が授けられる。この辺りで言えば、イケーブの名を持つ村の村長は腕輪を預けられておる。大抵の魔法使いは年を経るにつれて自然と魔法を制御できるようになるそうじゃが、これはそういう年になるまでの間、魔法で事故を起こさないように封じるための腕輪じゃよ」
「魔法を封じる?」
「そうじゃ。これは迷宮産のアーティファクトと呼ばれる魔道具でな。この腕輪をつけると一切の魔法が使えなくなるらしい。しかも、その抑圧されることにより魔法を外すと魔力が増大するそうじゃ。じゃから、魔法使いはときどき使いたいと思うようで、迷宮都市に宝箱を探して潜ることもあるときいておる。おぬしのように息をするように魔法を使ってしまう者にはよいじゃろうて」
おそらく何かしらの魔法を行使していたのだろうが、その魔法を切ったのか、カイは腕輪にそっと触れた。しかし触れると同時に何か痛みでも感じたかのように腕を引いてしまった。
「どうした?何か痛みでも感じたか?魔法を吸うだけで痛みなどは感じないと聞いておるが?」
「痛みと言うより、何かしびれるような感じがする」
「そうか。人によるのかもしれんの。儂は何も感じなかったのじゃが」
「村長は魔法を使えないからでは?」
「…知らんのか?儂は昔ダンジョンダイバーじゃったが、ダンジョンは不思議なところで、そこに潜るときには能力が一つつくんじゃ。ダンジョンに入るたびに違う能力を得られての。儂の場合は大抵が身体強化や速力強化じゃったが、たまに風魔法がつくこともあっての。魔法を使う習慣などないから、そういうときはこの腕輪を使っておったのじゃ。無意識に魔法を使ってしまうと、使い慣れていない者は魔法力を使い果たして倒れる場合があるからの。この腕輪自体はダンジョンに何度も潜ると結構な確率で拾えるものじゃよ」
イメルダはカイに迷宮の話はあまりしておらんかったのか?こんなことは基本中の基本なんじゃが。いや、イメルダが説明をすっ飛ばしたのかもしれんのお。ダイバー組合への加盟など注意しないと行けないことは他にもあるしのお。
「で、どうじゃ?その腕輪つけてみんか?」
「…少し考えさせれもらっても?」
「よいぞ。腕輪はいつでも貸せるからの。借りたいと思ったらいつでも来てくれ。ただ、次に儂がおぬしが魔法を使っているところを見つけたり、聞いたりしたら、問答無用でつけさせれもらう。それがこの村を守る儂の責任じゃ」
「わかりました」
そういうとカイは帰って行った。
カイはどうするかのう?
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