第13話 見つかってしまった
最強魔王様が日本に来てから順調に勇者召喚の儀式になり得る要因を潰して回っていた。
事故死・自殺・他殺・病死などなどを潰して回ったおかげで、基本的に日本人は寿命による死しか起こらなくなった。
流石最強魔王様と言った所だろう。
ついでに言うと、動物達が道路に飛び出して車に引かれることもなくなった。
勇者召喚以外にも獣を助けて異世界に犬猫の姿となり、勇者以上の力を手に入れる! なんて話もあったから、それも最強魔王様は抜かりなく潰しているようだ。
そしてそんな風に老衰以外で誰も死なずにいると
「やっと見つけました。この世の異物」
「ぬ?・・・・おぉ!?」
天界が異常を察知することとなった。
真っ白な天使の羽に、真っ白なトガのようなモノを着ている金髪美人がそこにいた。
まるで絵画から出て来たかのように美しい・・・・・が、
「ふむ・・・主では宗教的観点から言って軋轢を生みかねぬ。故にチェンジである!」
ここは日本である。
和の国日本である。
日ノ本と書いて日本である。
故に西洋の天使とか神が現れて貰っては困るのだ。
日本の宗教は仏教が強いゆえ、そこら辺考えて足を踏み入れるべきなのだ!
「それか貴様はすぐにパンチパーマになるか、耳たぶを長くするかいたせ。
そうすれば宗教同士の不毛な争いも起こらぬであろう」
見た目は大事である。
我は気にせぬが、人や髪は見た目を意識するからな。
なれば他国の、それも人の領地に足を踏み入れるのであれば、それなりの恰好であるべきだ。
せめておしゃぶり閻魔の部下のような着物姿で現れればよかったものの。
全く気遣いが見られぬ。
これだから天界の者はダメなのだ。
我は気にせぬが、そういう事をネチネチいう者もいるのだから、そこら辺気を付けなくてはいかんのだ。
我は気にせぬがな!
「どうでもいい話で煙に巻こうとしてもそうはいきませんよ。異物。貴方はこの世界にいてはいけない存在です。即刻この場から消えなさい」
「おぉ! これはあれか! これはあれであるな! ブーメランと言う奴だな!」
確かに天使が言うように最強魔王である我はこの世界にいていい存在ではない。
だがそれは天使も同じこと。
天使も下界に降りてはいかんのだよ。
そんな意味を込めて笑っていたら、天界人お得意の心を呼んで来たのか、目の前の天使は顔を真っ赤にし、怒り始めた。
「なるほど。忠告を聞き入れないと言う事ですか。ならばこの私が貴方と言う異物を排除「ふむ、話が無駄に長いな」―――――」
御託が長すぎて、最強魔王様は飽きてしまった。
故にぱちんと指を鳴らし、天使のみの時間を巻き戻した。
排除することも、記憶を弄ることもできたのだが、天界の者に安易に手を出すと戦争になってしまう。
最強魔王様は最強であり、戦いが大好きであるが、それはスポーツや遊びの範疇であればこそだ。
マジモンの殺し合いはすかん。
だって、マジモンの殺し合いを始めてしまうと、血を見る前に相手はチリになってしまうのだから。
やはり、戦闘は観戦するに限る。
さすれば血や汗が飛び散る所を見ていられるのだから
「さて、今日は念願のバルボッサ軍団 VS バルバロッタ軍団の熱い戦いである。必殺のデスティーノが炸裂するのか見ものであるな」
そう言うと、最強魔王様はウキウキとスキップしながら、プロレス会場へと向かった。
もはや先程会った天使の存在など頭の片隅にも残っていないのだった。
「・・・・・あら? 私はいったい何を?」
最強魔王様に会った天使だけ時間を巻き戻され、只今天界へと帰って来ていた。
「おぉ~、プリンシー。こんな所でぼ~っとして何をしているんだ~?」
「なにって・・・・・・これから日本人の死亡者が激減した理由を調べに行くのよ」
「そうか~、頑張れよ~」
のほほんとした友達天使に見送られ、プリンシーと呼ばれた天使は仕事を始める。
そしてひと月ほどかけて、日本の死亡者が激減したのか理由を見つけ、また最強魔王様の元へと飛んでいくのだが、
「・・・・・・・・・・・・・あら? 私はいったい何を?」
「おぉ~、プリシー。何やってるんだ~?」
「ええっと・・・・・・・これから日本人の死亡者が激減した理由を調べに行くのよ」
「おぁ~、そうか~、頑張れよ~」
結局同じように時間を巻き戻される事となった。
もしもプリンシーに声をかける天使が、のほほんとしている者でなければ、プリンシーの異変にすぐにでも気付けただろう。
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