第34話

亮介くんに手を引かれて家に着いた。

部屋に入って、すぐにバスタオルを持ってきてくれて、髪の毛の上にかけられた。そして、バックの中身をタオルに広げて、拭きはじめた。ぼーっと、部屋の床に座り、亮介くんが拭いてるのを見ていた。


「携帯使える。よかった」


「…さっき、叩いてなかった?」


「…ちょっと、辛抱できなかった」


亮介は急にしんとした。


「…俺、劇団辞める」


「ど、どうして?」


「女優を殴ったから。…暴力振るうやつはいられない」


「でも、亮介くん…」


「仕事探すから、ここにいてもいいかな。完全にヒモだけど」


「もちろんだよ?でも辞めることないよ?」


「暴力はダメなんだ。でも守れなかったから。覚悟はできてる」


「亮介くん…」


「役者だからなのかな、気持ちが高まってって、止められなかったんだ。うまくなだめたりができなかった…」


「…亮介くんだけのせい?」


「うん。笑理のこと、変に言われるの、もう許せなかった。我慢できなかった」


今度は私の髪の毛を拭いている。


「俺は、人の気持ちを察する事とか苦手。なんか、いきなり男がプロポーズするのが普通とか、上を目指さないのは悪いとか言って…すごいキレだしたんだよ。なんで?わかる?」

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