第24話 ジン②
現代ではスタイリッシュな紳士の飲み物になっているジンだが、かつてのイギリスにおいては、下層階級の卑しい飲み物とされていた歴史がある。
18世紀になるとイギリス政府はフランス産のブランデーなどに重い関税をかけ、さらに無許可でのジンの製造を合法にした。
ビールにも使えない粗悪な麦芽でも作れるし、熟成もしないからすぐ金になるし、保存がきくのですぐに売れなくても置いておけるので、新規の業者も参入しやすい。
これに加えて産業革命で大量の労働者がロンドンに流れ込んでスラム街が形成されると、安く手に入って一気に酔っぱらってしまえるジンがそうした場所で多く消費されるようになった。
ちなみに、当時は穀物由来のスピリッツをまとめて「ジン」と呼んでいたようで、必ずしもジュニパーベリーが使われていたというわけではなかったようだ。
こうした経緯があり、18世紀には「ジンは下層階級の飲んだくれの酒」というイメージが付いてしまった。ジンなんか飲んでいる奴は、下賤な身分のろくでもないアル中野郎とみなされたのだ。
この時代のロンドンを描いたシャーロック・ホームズのシリーズを読んでも、知識階級でそこそこ高い身分であるホームズやワトソンがジンを口にするシーンは出てこない。
この当時のイングランドにおける1人当たりのジンの消費量は年間10Lにもなり、イギリス政府も規制を進めようとしたがなかなかうまくいかず、穀物価格の上昇などの要因で何とか歯止めがかかったようだ。
そんな有様だったが、19世紀前半に連続式蒸留器が発明されると、現代と同じジンの製法、通称「ロンドン・ドライジン」が確立さた。
それまではモルトワインをボタニカルと一緒に単式蒸留器で蒸留していたのが、上等な材料を使ってより高度な連続式蒸留器で純粋に近いアルコールにした上で、ボタニカルの香りを付けるようになったのだ。
こうしてジンの味はより洗練され、イメージアップによって上流階級にも飲まれる酒として生まれ変わった。
それまではこのイメージアップの走りとなったチャールズ・タンカレーが興したブランドの「タンカレー」は、現代でもジンの代表的ブランドとして扱われている。
ジンはジュニパーベリーをはじめとする各種材料で香りが付けてはあるが、元が連続蒸留したものなので味の癖は小さく、カクテルのベースにもよく使われる。
トニックウォーターと炭酸と混ぜた「ジントニック」は、バーテンダーの実力を測るための基本中の基本と言われている。
ウィンストン・チャーチルが愛飲した「マティーニ」もジンを使ったカクテルだ。
もちろんそのまま飲んでもおいしい。個人的には、ストレートならロックで。もちろんレモンかライムをつけて。
カクテルならジントニック。ジンバックもいい。(他に詳しく知っているわけじゃないけどね……)
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