埋葬

 ポンプが討たれてから、数日後。


 泣きじゃくるポピーを脇に抱え、運ばれてきた躯をレナは見下ろした。

 ポンプの躯は馬車で運ばれてきた。

 砦の外に置かれ、坂の下にまでレナ達がきて確認をしている。

 他の者について聞いたところ、町の中で殺されたため、回収できなかったとのこと。


「んびぇぇぇっ! 兄ぢゃぁんっ!」


 腹に負傷をしていたので、内臓が外に出ないよう、慎重に甲冑を脱がす。切り離された首は、元の位置にくっ付けてあげた。


 シュートラント大帝国では、風神と呼ばれた男。

 最期の死に顔は、とても満足げだった。

 片方の口角が吊り上がり、そのまま死後硬直をしている。


 たくさんの躯を見てきたが、ここまで見る者に悲壮感を与えない死に顔は初めてだった。


 しかし、肉親にとっては、躯から感じるものなど受け止める余裕はない。ポピーはひたすら泣きじゃくって、子供のようにレナに抱き着く。


「埋めようか」

「ああ……」


 ポンプの躯は、砦の外に埋めてあげることにした。

 運ぶのを手伝い、レナは砦の中から、町の方角を向く。


(……ただの兵士じゃないな)


 ポンプの体をシーツに包み、両端を二人が持ち、真ん中をレナが持つ。


(腹を除いて、甲冑に傷がない)


 風が起きれば、姿を消す。

 風神の速さは、帝国内にいる軍の中でも有名。


(無駄な手数はなし。相当な手練れ)


 躯から伝わる違和感に気づいているのは、レナだけではない。

 顔を見れば、どれも表情が強張り、冷たい汗を流していた。

 練度関係なく伝わっているのだ。


「にいぢゃぁぁ……っ!」


 ともあれ、今はポピーの事を慰めてあげないといけない。

 ポピーの力で土壌の硬さを変えて、全員で埋葬した後、しばらくの間、皆は立ち尽くしていた。

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