反乱分子

反乱分子の女

 魔王軍は敗退してしまったが、残党が反乱分子として残っていた。

 反乱分子が普段どこにいるかと言えば、暗い穴の中であったり、山や海岸の洞窟など、人が近寄らない場所に住処を作っている。


 この賑やかな町。――ダーウィン町にも、その片割れがいた。


(殿下をどうお救いになればいいのか)


 相も変わらず賑やかな食事処。

 人間たちにとっては、都合の良い玩具がいるため、天国そのものであった。


 女を犯しながら食事ができる。

 そのため、娼婦は必要なく、ウー大陸にはその手の商売が消えつつある。


 円卓がいくつも並べられた広い空間。

 テーブルの中には、頭を押さえつけられ泣いている少女達の姿があった。

 同じ魔族として助けてやりたいが、無闇に動くことができない。


(魔力封じの石さえ、どうにかできたら……)


 生活まで魔法に依存している世界だ。

 魔法を生活に使用しているのは魔族だけではなく、人間も火起こしであったり、水浴びであったりと、使いどころが多い。


 その中でも、特に魔族は魔法を己の手足の如く使ってきたので、これが使えないとなると、四肢を千切られたのと同様に、弱体化してしまう。


 端の席に座る女、ウェイは成す術がなく、昼間から酒を飲み、途方に暮れていた。


「おい。なんだ。あれ」

「奇抜な恰好だな。ていうか、怖くね?」


 人間たちが戸惑いだし、ウェイは皆が注目する店の入り口に目を向けた。


(同じ人間でしょ)


 心の中で嫌味を言い、鼻で嗤う。

 入り口の所には、少し背の高い女が立っていた。

 何もない一点をボーっと見つめ、髪の毛を咥えた唇はぶつぶつと何かを唱え、全体を纏う雰囲気が近寄りがたかった。


 それだけなら気持ち悪い女として片づけるが、ウェイの目には無視できない者が留まった。


(殿下!?)


 魔王のご子息であるベルブが、気まずい表情で後ろに立っているのだ。

 以前に比べたら、随分と痩せてしまったが、間違いなく殿下だった。

 再び、殿下の姿をお目に掛かれたことは、素直に嬉しい。


 だが、疑問がある。

 前に立つ女は何者だろう。

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