第40話 何も知らずに過ごしていればいいさ


 そして俺がメンバーたちに呼びかけると、メンバーたちは作戦決行の時間が迫っている為か、かなり興奮しているようである。


 当然、興奮しているのはメンバーだけではなく俺自身も興奮していることが、自分でも分かる。


 早くあのくそどもを潰して、世界を正しい形に戻したいという欲求が一秒ごとに高まっていく。


 しかしここで我慢できずに突っ込んで、俺一人の軽率な行動で作戦自体が失敗に終わってしまっては目も当てられない。


 それは他のメンバーも同じである事が窺えて来る。


 それは、今増幅していっている『女どもを叩き潰したい』などという目先の欲求よりも『男性が支配する世界を』という我々の目的の方が圧倒的に優先順位は上であるという事である。


「女どもは残り少ない時間を、その時が来るまでに何も知らずに過ごしていればいいさ」





「で、あるからして…………おや、近くにスレットが現れたようだね。 では、お前たちは慌てず騒がず避難するようにっ!!」


 麗華に半ば強制的に連れられた(強制的にとも言う)先で斎藤博士と出会ってから一週間がたった。


 あれから授業が終わった放課後は定期的に斎藤博士が自分で所有している、国の息がかかっていない修練場で麗華と模擬戦を行っておこなっては、そこで得たデータを斎藤博士へ送るという生活をしていた。


 麗華はというと、俺の言いつけ通り初日以降は大人しくしてくれているので非常に助かっている。


 もしかしたら毎日押しかけられるのでは? 最悪学校でも押しかけられるのでは? と最悪のケースを想像していたのだが、そのような事も無く、スレットもあれ以降現れず、平和で平穏な日常を過ごすことが出来ていた。


 しかしながら、それでもスレットがこの世界から居なくなったという訳ではないという事が、街中に響き渡るサイレンと担任教師である月上先生の避難誘導の指示が思い出してくれる。


 そして俺はというと、先に避難先へと移動すると女子生徒たちから『なんで男子であるお前が女子である私たちよりも前にいるんだ?』という目を向けられてくるので、一旦クラスの女子たちが教室から居なくなるのを待つ。


 最悪足を引っかけられて転かされたり、分からないように死角から殴られたり蹴られたりつねられたりするので、そんな状態になると分かっていて自らそこへ飛び込むつもりは毛頭ないし馬鹿らしい。


 そもそも俺の今世での目標は『平穏にくらしたい』というのが目下の目標である為、自ら火の粉をまき散らしに行く必要もないだろう。

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