第24話 解放されると思ったらこれ
そして、俺が昨日の戦いで生徒手帳を落としたところを見られてしまったというのであれば、どう考えても詰んでいるのではなかろうか?
将棋で言うと王手、チェスで言うとチェックメイト状態である。
「…………そ、そうか」
「えぇ、そうよ。 ほら、私が拾った生徒手帳。 お返しするわ」
「ありがとう……。 ちなみにこの事は……?」
「とある人物には報告したわ。 でも信頼できる人だから安心して」
最悪だ。
現世に戻って一週間も経たずして俺の平穏はぶっ壊されそうだと頭を抱えるのであった。
◆
「どうですか? 斎藤葵博士」
「分からん。 しかしながらこの者は確かに男性であり、そして魔術行使用媒体を使っていないのは確かである」
ここは東京魔術大学附属魔術技術高等学園がある地区の日本魔術師協会の施設である。
そしてこの施設は通称東京魔術学園内にあり、常に未来の魔術師たちの育成具合も確認ができる。
「にわかには信じられませんね……」
「あぁ、だから困っているのだよ。 これをどう本部に報告をすれば良いというのかね? 本当の事を言った所で本部からは『嘘を吐くな』という内容の返事が返ってくることくらい想像がつく。 ならば適当にそれっぽい嘘を報告しても、後々この男性の存在が本部までに伝わり『なんであの時に真実を伝えなかったのか?』と言われるのも想像がつく」
そして私は助手の中島に対して少しだけ愚痴ってしまった。
本部での対応を中島に愚痴った所で何も変わらない。
そこまで考えて、私は頭をガリガリと掻き、くせっけ気味の腰まである黒髪が揺れる。
「まぁ、確かに想像がつきますね……」
「そもそも、男性があのレベルで魔術を行使できるというだけならばまだ何とかなったのかもしれない」
いつだって前代未聞というのは面倒くさいものである。
こういうお役所仕事は特に。
「そもそも上の奴らは頭が固すぎるのだ」
「それ、上にチクってやりましょうか?」
「今年のボーナスで泣きたければどうぞ」
「いやだなぁ。 私は斎藤博士の味方ですよ」
まったく、主任という肩書は、給料はそこまで上がらないのに責任は倍以上にのしかかってくるのだから納得がいかない。
「とりあえず百聞は一見に如かずとも言うわけだし、例の彼をここへ呼んでみれば良いさ。 さて、そろそろ学園も全ての授業が終わった頃合いだ。 お手並み拝見と行こうではないか」
◆
「何一人で帰ろうとしているのかしら?」
何でこうなった? どうして生徒手帳を落とすという初歩的なミスをしてしまったのか、などなど、今日一日は悶々とした気分で過ごし、ようやっと解放されると思ったらこれである。
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