第23話 間抜け野郎は見つかったようだな
いったい何の冗談かと問い詰めたくなる。
朝からいい加減にして欲しい限りだ。
というか、本当にいつもの氷室麗華とは別人のように人が変わってしまっているので、冗談ではなくガチで『新種のスレットに洗脳されているかもしれない』としかるべき機関へ通報した方が良いのではなかろうか?
そう思ってしまう程には俺の知っている氷室麗華と目の前にいる氷室麗華は別人であった。
「てかマジで何なんだよっ!? いい加減にしてくれっ!!」
「何って、昨日助けてもらった事に対してのお礼と、今までの無礼を謝罪したいというだけなのだけれども? …………ダメかしら?」
「は? それは本当たまたま近くを通っただけで…………」
そこまで話して俺は気づく。
「いや待て」
「はい、いくらでも待たせてもらうわ。 それこそ、一日中ここで待っていると言われた場合、例えこの場所が戦場になろうとも、一歩たりとも動くことなくこの場所に留まらせてもらうわ。 そしてその為であれば魔術行使も厭わないわよ?」
「なんでそうなるんだよ……っ」
駄目だ、頭が痛くなってくる。 というかもうすべてをぶん投げてこの場所から逃げ出したいのだが、その場合このカオスな展開になってしまっている原因を解決できていない為結局は問題の先送りでしかない。
というか氷室麗華とは同じ教室のクラスメイトでもある為ここで逃げたところで数十分後には教室で再開するわけである。
ここで逃げても何の解決にもなっていないのであれば、今ここでこの問題を解決した方が幾分かマシであろう。
幸か不幸か野次馬は集まって来ているので俺が氷室麗華の弱みを握って脅しているとか囁いている奴らの誤解は解けるし、俺が弱みを握って脅しているという噂が広まる事もないだろう。
「てか、そうじゃなくて…………なんで昨日お前たちを助けたのが俺だって思ったんだよ? そもそも男性である俺がお前らでも太刀打ちできないような敵を相手にどうにかできるわけが無いだろうが」
「え? 今さっき『たまたま近くを通っただけで』と、私たちを助けた言い訳を──」
「聞き間違いだ」
「で、ですが──」
「聞き間違いだ。 それに今はそんな事よりもなんでお前たちを助けたのが俺だって思ったのか説明してくれ」
ふう、危うかったが何とか話題を逸らして俺の凡ミスから目を逸らせる事ができた。
「分かりました。 と、言ってもいたって単純なのですが……、現場に生徒手帳を落としていたので……」
どうやら間抜け野郎は見つかったようだなっ!!
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