第22話 以前の麗華の方が良い


 一体この女、氷室麗華は何を考えているというのだ?


 なんだか物凄く嫌な予感して先程から胸騒ぎが治まらないのだが、全くと言って良いほど氷室麗華が何を考えているのかが分からない。


 そして全く分からないからこそ余計に嫌な予感がしてくるという悪循環である。


「……一体何を考えているんだ? 俺を騙して何を企んでいる?」

「…………そうよね……。 そう思われても仕方のない事を私は今まで貴方に対して行ってきたもの。 そう簡単に謝罪が受け入れられる訳もなければ、謝罪したいという気持ちが真実であると理解してもらえる訳もないわね。 私はなんと愚かな事を今まで貴方に対して……いや、東條圭介様に行っておこなってきたのか……。 そんな事に今さら気付いてしまうだなんて、私は何と愚かな女性なのでしょう」

「い、いや……そんな事は無いと思うぞ? お前はいつも市民が平和に暮らせるように日々頑張っているじゃないか……っ」


 そして気が付けば何故か俺が氷室麗華をフォローしているではないか。


 勿論、こんな事など実際に氷室麗華へフォローを入れている俺自身でさえ理解できていないのだから周囲にいる人たち(学園の生徒たち)は俺と麗華を交互に見た後、俺に対して射殺さんばかりの殺気を視線に載せて俺を睨んでくる。


 彼女達の気持ちも分かるのだが、だったら逆に俺はどうすれば良いのか教えてくれよと思ってしまう。


 何なら今目の前にいる氷室麗華が別人であり、新種のスレットが化けている仮の姿と言われた方がまだ納得ができる。


「あぁ……やはり東條圭介様はお優しいのですね。 こんな私に対してお優しい言葉をかけてくれるなんて……。 私、感動のあまり涙が溢れて来てしまいます……っ!」


 そして氷室麗華は何故か俺にフォロー入れられた事に感極まったのか、ついに泣き出してしまうではないか。


 全くもって理解できない。


 理解できなさ過ぎて気持ち悪いとさえ思ってしまう。


 それこそ以前の麗華の方が良いだと思ってしまうくらいには……。


「おいっ! 流石に人前で泣き出すなよっ!! これではまるで俺がお前を泣かせてしまっているみたいじゃないかっ!!」

「え、ええ……っ、そうねっ。 私は今、東條圭介様の優しさに触れて感動している訳で、ある意味では東條圭介様に泣かされているという表現は間違ってないわ……っ。 それもこれもお優しすぎる東條圭介様がいけないのよ……っ」

「本当冗談キツイから止めてくれっ!! というかさっきからの『東條圭介様』って言い方何なんだよっ!? 気持ち悪すぎて鳥肌が出てるんだがっ!?」

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