第12話 残念ながら不可能である




 

 現場に到着してみると、どうやら今回のスレットは特殊系魔術を無効化しており打撃系魔術でしかダメージを与えられない個体であるにも関わらず硬い鱗に空を飛ぶ翼まで持ち合わせているようである。


 その姿は正に異世界で幾度となく討伐してきた竜そのものであった。


 そして、その竜の形をしたスレット相手に魔術師達がかなり苦戦をしているようである。


 当たり前だ。


 いくら持ち前の魔力を、媒体を通して魔術を行使できると言えども女性である以上男性と比べて腕力に関しては低いのである。


 そしてその媒体は使用者の魔力を魔術または魔力を外に放出して武器等に付与する物であり、使用者の身体能力や筋力を増幅させるものではない。


 さらに言うと、今まで媒体を使った魔術行使の練習をして来たのだろうが筋力をつけて物理的な攻撃力を上げるトレーニングなどは殆ど行ってきていない事が彼女達の戦闘内容から見て取れる。


 恐らくこのままでは全滅だろう。


 しかしながら彼女達魔術師の表情は暗くなく、あえて時間稼ぎをしているように思えるので、恐らく自分達では太刀打ちできないと判断し、本部から打撃系の魔術師をサポートとして派遣依頼をしており、その魔術師が到着するまで時間稼ぎしているのであろう。


 いったいどのような魔術師が来るか楽しみである。


 そんな事を思いながら魔術師達を眺めている事十分程で恐らくサポートを任された魔術師が鉄の翼を使用しながらこちらに飛んでくる姿が目に入って来る。


 それは他の魔術師達も同じようで全員安堵しているのがその表情からも見て取れる。


 サポートにきた魔術師は竜型のスレットの真上にまで行くとここまで運んできてくれた鉄の羽を取り外し、背中に背負っている槌を手に構えると、その構えた槌に取り外した翼が装着されていく。


 なるほど、あれは魔術行使用媒体の外付けパーツにも応用できる訳か。 良く考えられているな。


 そしてサポートに来た魔術師はそのまま重力による自由落下の力を利用してそのまま竜型のスレットの頭を上から下へと打ちつける。


 すると衝撃波が、次いで衝撃音が遅れてやってくる。


 それだけ彼女の放った一撃が凄まじい威力であったという事なのだろう。


 しかし、と俺は思う。


 もし目の前にいる竜型のスレットが、異世界で俺が倒していた竜と同じような存在であるとすれば、あんな子供だましのような一撃・・・・・・・・・・・では倒す事は、残念ながら不可能である。 


 そもそもあの程度の打撃で倒せるようであれば異世界で竜は恐れられないし崇められない。


 最強の一角を担う存在だからこそ恐れられ、崇められ、竜殺しは英雄になるのだ。

 


 

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