第91話 役職は勝手に決められる
「全警備兵へ、東岸監視基地で非常事態だ。侵入者は男性、190cm、髪は茶、筋肉モリモリ、マッチョマンの変態だ」
そんな無線が入る。
「了解した。」
酒場で連絡を受けた俺はそう返信し、もう少しで落せそうな女たちに向かって言った。
「かっこいいトコ見せましょ。」
その数分後、圧倒的な筋肉から成されるパワーを前に、カッコ悪いトコを見せることになる。
「俺は変態じゃない!!」
全てを制圧し宣言したのは、辺境の島国、その警備兵である俺たちでさえ知る最強のヒーローだった。
「娘の元に行かなければならないんだ!!」
そう鬼気迫る表情で警備兵を殲滅し続ける憧れのヒーローに、戦意喪失、武器を棄て、歩み寄る者がぞくぞくと現れた。
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「じゃあ、クラスの代表は百道と黒瀬ってことで決定だぞ。」
やる気があるのかないのか分からない担任の声が教室に響く。
推薦で決定された前期文化祭のクラス代表。
その決定を宣言した。
「なんで私じゃないのよ!!」
そんな教室で1人不満を爆破させるのは留学生、レインボークリスことクリスティン・メイトリクスだ。
「アイツよりも私が代表でしょうが!!」
そう静かに黒板を見つめる黒瀬香紅璃を指す留学生。
「投票の結果だぞ。」
「なんで私が一票なのよ!!」
不満全開で怒鳴ったクリスティンに、
「そういうところだぞ。」
英雄高校能力科2年担任の大松は、そうクリスティンに指摘した。
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担任の大松先生から放たれた言葉に、脳内はパニックだった。
私が前期文化祭のクラス代表…
クラス総出のイジメかな…
泣いて逃げ出したい思いを押し殺し、ジッと耐え、黒板を見つめる。今動揺したらイジメは加速する。なんてことないって雰囲気でいなければ…
そんな最中、怒鳴り声を上げるメイトリクスさん。
代表になりたい人がいる。
なら任せよう。
そう思い、深呼吸した私はゆっくりと立ち上がった。
「お断りします。なりたい人が代表として頑張る方が意義があると思いますので…」
予想以上に注目を浴び、言うと同時にゆっくりと教室を出た。
出た後は全力疾走だ。消えてなくなりたい…
多分、今頃教室では私をみんなで笑っている筈だ。
「イジメ駄目、絶対…」
泣きながら私は行きつけのトイレの個室に籠もった。
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「香紅璃様怒ってたよね…」
「どうしよう、嫌われちゃったかも…」
慌てふためく教室内。
「というわけで、代表はメイトリクスだぞ。」
そんな空気を完全に無視しそう言って教室を出る担任。
「お願い、クリスティンちゃん!!香紅璃様の為に!!」
そうクラスメイトから願われる。
「納得いかない…」
不満しかしない前期文化祭のクラス代表として私の初仕事は、黒瀬香紅璃のご機嫌伺いだった。
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