第90話 禁断の地
「で、なんで来ないんだ?ワンマンコマンドーは。」
何故かレインボークリスことクリスティン・メイトリクスに空港へ連れて行かれた俺は、待てど暮らせど現れない元世界一位のヒーローに言及した。
「私が聞きたいわよ!!昨日から連絡取れないし…パパのバカ!!また約束破った!!」
そう拗ねるレインボークリスだが…
「なんで連絡取れないのに俺を連れて着たんだ…」
貴重な休日に連行される身にもなれよ!!というか無茶苦茶だなこいつ!!知ってたけど!!
「パパのバカ!!大っ嫌い!!」
そう癇癪を起こした彼女を見ながら思う。
「俺もお前大嫌い…」
貴重な妹との時間を奪われた恨みは深い。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
百道家には、入ってはならない禁断の部屋がある。
入ったなら、死ぬよりも恐ろしい目に合わせると一家の支配者である母、神娘が常々言っている為、百道家の子どもたちは好奇心よりも恐怖が勝り入ることのない場所。
それが父、乱鶯と母、神娘、2人の寝室兼衣装部屋。
そんな不可侵の領域に踏み込んだ私。
「ヤバ…ママこんなのでシてんだ…」
面積が恐ろしく小さい下着や大丈夫なところだけを隠さない下着、所謂大人のソレの為に作られた下着やナース服やバニースーツ等様々な、大人なプレイの為に用意された衣装にそんな感想を抱きながら、衣装や下着を掻き分け、お目当ての品を見つけ出す。
「あった〜、愛しの私のデバイス〜。」
宿題の提出を忘れた(そもそも白紙)の罪で没収された命の次に大切なそれに頬擦りする。
「色ボケ鬼ババアに触られて怖かったよね~。」
ほんの1日離れただけで奇跡的再会を果たした生き別れの双子の様に思える。
「ヤバ、めっちゃ通知きてる…」
取り戻した半身触れた時、絶望的な殺気から背中を襲った。
「凛樹…色ボケ鬼ババアに言い訳はあるか?」
そこに存在するだけで衛生から見た東日本が歪む程の殺気を漏らし立つ母に、私は死ぬよりも恐ろしい恐怖を確信した。
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「ママ、お皿洗います。」
夕飯後、まるでAIで操作された様に機械的にそう言って動く凛樹。
「凛樹が自主的にお手伝いなんて珍しいね。お小遣いが欲しいのかな?」
そう笑いながらも嬉しく思う僕に
「お小遣いいりません。ママのため…ママは若い…ママは可愛い…ママが最高…ママ大好き…」
妻に見つめられ、壊れたロボットの様にうわ言を呟きながら台所に向かう凛樹。
「神娘さん…なんかしましたか?」
異常な状況に僕は妻に問うた。
「なにもしていない。だって私は若いし、ババアじゃない。」
そう真っ直ぐな瞳で答えた妻に、僕はなにも言えなかった。
「それに、躾けは大事だろう?」
妻と凛樹の間になにがあったのか、僕は考え無いことにした。
「おっはよ〜!!」
翌朝、昨夜のあれはなんだったのかと疑いたくなる程の平常運行で居間に現れた凛樹と、
「さっさと食べて支度しろ。私はバカ息子を起こしてくる。」
そう言って2階に上がる妻。
いつも通りの日常がそこにあった。
「凛樹…昨日は…」
「あれ〜今日火曜日なんだ〜、1日得した〜ラッキ〜。あれ〜月曜日いつ終わったんだっけ〜?まあいいや〜、月曜日がない週もたまにはあるよね〜。」
質問するよりも前に、愛しい娘から奇々怪々、支離滅裂な言葉が紡がれた。
「月曜日は絶対に存在するし、無い日は存在しないんだよ…」
娘の頭が心配になった。
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