第46話 連休の終わり

「金にものを言わせた変態がぁ!!俺がモッチー世界一可愛い妹のNo.1ファンなんだよ!!」

 デバイスに向かい怒鳴る兄を呆れながら見て、僕は武生院の鍛錬場に向う。


 光兄ちゃんに凛樹姉ちゃん、氷華も、能力だけトップヒーロー(ヴィラン)になることが出来る。

 それに対し、僕は能力的にヒーローにはなれない。

 『拷問』それが僕の能力。

 一定の距離や条件で、相手の心を破壊する精神世界に導く完全にヴィランの能力。

 この能力を使うことがないことを望む僕には、ヒーローもヴィランも目標となり得ない。

 なら、僕は将来どう生きよう?

 武生院の跡取りか、百道のプリンの跡取りか…

 それとも全く違う仕事か…

 何も分からない未来。

 なら、何にでもなれる様に生きよう。

 そう思い、武生院の武術を習うことを決めて2年目。


「才能ないや…僕。」

 そもそもの身体能力が並以下だと悟った。



−−−−−−−−−−−−−−−−−


 

「終わった~っ!!」

 連休中の補習最終日、終業の時間を知らせるチャイムと同時に、教室で達成感全開に喜びの声を上げる女生徒、百道凛樹。

「終わったって…お前、全然出来てないんだが…」

 赤いピンで彩られた回答をそう見せる。

「終わったから問題なし!!」

 そう言い切り、教室を飛び出していた。

「おい!!百道!!」

 そう怒鳴る。

「先生お先〜。」

 制止も聞かず、ヘラッと笑う。

 あのクソガキ…


「ありがとね、先生。」

 走り去ったと思っていた百道は、チラッと顔を出し、そう小さく呟いた。

 

「じゃっ!!また明日ね~!!」

 そう元気よく駆け出す少女。

「なんやかんや、アイツは上手く生きていくんだろうなぁ…」

 バカで不真面目、サボり魔で我儘。それでも、何故か憎めない愛嬌。

 誰かに取り入るわけでもないし、要領がいいわけでもない。

 しかし、あのバカは将来、誰かに助けられながらも誰かを助ける。そんなことを繰り返しながら、さり気なく良い生活をしているんじゃないかと思う。

 

「羨ましい限りだ…」

 そう呟く自分も、本心では手の掛かる可愛い生徒として、教師生活で最も印象に残る生徒の1人となっていることに思わず笑っていた。



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