第44話 メンタルおばけ
「百道…お迎えが来てるぞ…」
補習を終えた生徒に、そう伝える。
「お迎えって…本当のお迎えだよ…」
ヘヘッ、と笑う美少女の笑みは全てを諦めた儚さがあった。
「明日休むかも…」
そう言って教室を出た百道から、一種の覚悟が見えた。
頑張れよ、百道…
なんやかんや、可愛い俺の生徒だよお前は…
問題児だが憎めない。手の掛かる生徒だが、1番思い出に残る生徒。
百道凛樹はそんな生徒だった。
そう見送った翌日、あの母親にこってり絞られたであろう百道は休みになると思っていたが、ケロッとした顔で教室にやって来た。
「マジで死ぬかと思った~!!ねぇ、マジママ有り得なくない?先生?」
「だったらちゃんと勉強しろよ!!お前の為の補習だぞ!!」
翌朝、ブーブー母親への愚痴を吐き出す彼女に、怒鳴りながら思った。
頑丈だなぁ…百道の子どもは…
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補習が終わり、校門も裏門も使わずに、コソコソとフェンスを越え、着地した私の目の前にママがいた。
逃げることも抵抗することも出来ずに、襟を掴まれ、家まで引き摺られたのだった。
居間に正座させられ俯く私、顔面蒼白で嫌な汗がダラダラと流れている。
映し出された成績表と補習の通知。黙っていれば
「凛樹…何か言い訳はあるか?」
熊くらいならその殺気だけで殺せる程の圧を放ちながら、笑顔で聞くママ。
「ごめんなさい…殺さないで下さい。真面目に補習受けるから…」
ベタァと床に頭をつけた、見事な土下座をする。
そんな私を見て、はぁ…と溜息を短く吐いたママ。
「…補習を受ける?当たり前じゃバカ娘ぇ!!そもそもなんだこの点数は!!」
ダメだ、完全に元ヤンモードになってる…
「ギャヒン!!」
拳骨が落とされた。
「痛ったい!!バカになったらどうすんの〜!!」
頭頂部を撫でながら涙目でそう言う私。
「十二分にバカだろうが…バカ娘。」
グニぃとホッペを引っ張られる。
「
そう言うが溜息を吐かれる。
「大バカ娘…いっぺん死んでみるか?」
ホッペを引っ張られたまま放たれる、尋常ではない殺気に、呼吸が出来なくなってくる。
「
ボロボロと涙を流してそう謝った。
そんな私を見て、ママは大きな溜息を漏らし言った。
「補習、絶対にサボるなよ。次はねぇぞ…」
今日1の殺気を放ち台所に向かって行った。
そんな片隅で、終始ガタガタと震えていたパパと知らない外国人2人。
あの子可愛いなぁ…一緒に写真撮ればバズるの確定だわ…
そんなことを思いながら土下座していた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
「めっちゃ可愛い!!」
あれ程の殺気を受けながら、既にケロッとした態度で私に抱き着く最強生物の娘。
どういうメンタルしてるのかしら…
「私凛樹!!よろしくね!!」
そういいながらデバイスを操り、バシャバシャと写真を撮っている。
「ちょっと!!アンタなにしてんのよ!!…私を誰だと…」
「ヤバ…めっちゃバエてる〜。美少女2人ってパナイゎ〜。」
抗議する私を無視し、デバイスで撮影した写真を確認している凛樹と名乗った少女。
「で、アンタ誰よ?」
それは写真撮る前に聞くことでしょうが!!なんかちょっとズレてるわね、この子…
「バカ娘…」
「オメェもだろ。」
そう呟いた私に、アイギスが私に悪態ついた。
父の秘書は、最近当たりが強い気がする…
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