第43話 愛嬌だけではどうしようもないことがある
「先生も大変だね~。」
問題が映されるデバイスから顔を上げ、そう言う問題児、百道凛樹。
周囲から頭1つどころか、2つも3つも抜けた容姿と、誰にでも陽気に振る舞う性格で、学校一の有名人であるのだが、学生としては、完全な問題児であった。
赤点常習犯であり、授業や補習をサボることも多い。
しかし、どこか憎めない愛嬌ある生徒であった。
「そう思うんなら、ちゃんと授業受けて赤点取らない様にしろ。」
呆れた溜息を漏らしながらそう言う。
「じゃあ、テストもっと簡単にしてよ~。」
そういいながらニッっと悪戯ぽく笑う。
彼女と同級生の男子たちなら、一瞬で魅了されるであろう。
「巫山戯たこと言ってんじゃない。赤点取らない様に努力するのが学生の仕事だ。」
そんな笑みに絆されずに、ビシッ言う。
「ケチ〜…」
そう言って拗ねた顔をする百道。
「そもそもお前、進学出来るか危ういの分かってるのか?」
自分の置かれた危機的状況を理解していない生徒に現実を伝えた。
「先生冗談下手くそ〜。いうて余裕っしょ~。」
ケラケラと笑う彼女。
「残念だが冗談じゃないんだ…自分のバカさ加減を知れ百道…」
教師としても認めたくないが、彼女が合格出来る高校は殆どない。
「アハハッ!!いやぁ~有り得ないっしょ!!…マジで?」
陽気に笑っていたが、青い顔になってそう聞いてくる。
「大マジだ。お前が行けるのは名前書けば合格出来る高校だけだ…」
「す、推薦とか出せるでしょ?先生?」
上目遣いでそう言うが、顔色が悪い。
「無理だろ…帰宅部で補習さえサボる奴に…」
アワアワと慌てだす百道。
「ヤバイ!!ヤバイよ~!!先生なんとかしないと!!」
「なんとかするのはお前次第だろうが!!」
あくまで他力本願な問題児にそう怒鳴る。
「マジでヤバイ!!本当にマジでヤバイんだって!!」
「先ずその乏しい語彙力をなんとかしろ!!」
そんなことを言い合う。
「マジでヤバイんだって!!ママに殺される!!」
頭を抱え震え出した百道。
「…すまん、今朝お前のお母さんに連絡した。」
百道のお母さんのヤバさは知っている。しかし、安否確認もあり、連絡しないわけにはいかなかった。
「終わった…」
そう呟いた百道は、一筋の涙を流し、全てを悟った表情で天井を見ていた。
その姿は、数時間後に死刑が確定した死刑囚の様だった。
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「あのバカ娘ぇ…」
朝食を終え、開店準備をしようとしていた時、平謝りしていた電話を切った神娘が殺気全開でそう呟いた。
ヤバいな…
その殺気を受けた宿泊客2名はガタガタと震え、僕も気が気でない。
「凛樹…説教ではすまんからな…」
青筋を立て笑う妻。
今日、接客出来るのかな…
開店後、結局接客は一宿一飯の恩を受けた2人にお願いした。
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