第34話 モフ白

「完売だぁー!!」

 数百個のプリンを売り切った僕は疲労と高揚感が混じった歓喜の声を上げる。

 その時、イベント開始2時間。

 レインボークリスという世界的なヒーローの力を思い知った。

 想定よりも遥かに早く、且つ完売したことで、時間的余裕と収益を生み出した。

「今日ばっかしは、ヒーロー協会に感謝だなぁ…」

 片付け作業中、ずっしりと重くなった簡易金庫を運びながらそう呟く。

「感謝すべきは私にでしょう…」

 ムスッ、と不機嫌そうに片付けを手伝うレインボークリス。

「私の人気で売れたのに!!」

 確かに、彼女の言い分は分かるけど…

「夕食代に朝食代…お前のせいで我が家は今月火の車なんだが?」

 我が家の備蓄米を全て食らい尽くしたクリスティンに、神娘はそう言ってほんの少し殺気を向ける。

「うっ…だってぇ~…」

 涙目になるクリスティン。

「お腹空いてたんだもん…」

 そう呟く彼女。

 ぐぅ~!!と、その呟きよりも大きな腹の虫が鳴いた。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



「ウチの焼きそば食ってってよ!!」

「ウチのお好み焼きも!!」

「いや、ウチのラーメンだ!!」

 出店の店主たちによる私の奪い合いが起こっていた。


「バイト代だ。」

 腹の虫が鳴いた私に、溜息を漏らしながら武生神娘が私に1万円札を差し出した。

 そんなバイト代を握り締め、出店郡に向かった私は、やっぱり人気者だった。

 勧められるままに食べに食べた。

 私が食べれば客が来る。

 故に店主たちは皆、私に無料で振る舞う。

「次は何処?」

 そう言う私。

「「「まだ食べるのかよ…」」」

 何故か周りがドン引きしていた。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



「それで、こいつの名前はなんて言うんだい?」

 神也叔父さんがそうモフモフを指して言う。

「え〜っと…なんだったっけ?」

 モフモフを私は見る。

「846号です。」

 そう答えるモフモフ。

「それ、名前じゃないよね。」

 苦笑いする神也叔父さん。そりゃそうか。

「名前決める。」

 氷華が嬉しそうにぴょんと跳ねた。


「牛乳プリン。真っ白だから。」

 氷華がそう言う。 

「駄目でしょ…可哀想じゃん…」

 妹のネーミングセンスに絶望する。

「美味しいのに…」

 ムゥ、と拗ねる氷華。

「凛樹は?」

 神也叔父さんの問いに、私は答える。

「オオシロ。大っきくて白いから。」

「苗字じゃん…」

 神也叔父さんが溜息を吐く。

「モフモフ!!」

「白も入れなきゃ駄目!!」

 氷華と私の要望の元、モフモフは『モフ白』と命名された。


「百道モフ白…」

 モフ白は、そんな安直で語呂の悪い名前を、嬉しそうに何度も呟いていた。

 





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