第31話 無計画
ヒーローの本場にして聖地アメリカ。そんなヒーローの聖地で最硬の防御と評されながらも、僅か2年しか活動しなかったヒーロー。『アンキーレの盾』ことアイギス・シュバリエ。
しかし、ヒーローは引退しながらも、世界一位のヒーロー、ワンマンコマンドーの秘書となり、彼の引退まで、数多の戦場に立っていたことを知る者は少ない。
そんな歴戦のヒーローよりも修羅場を潜って来たアイギスは、雇用主の計画が渡航初日で崩壊したことを知り、頭を抱えていた。
なんせ、武生神娘と思っていた人物が、百道神娘だったのだから。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
「怪獣846号、実験の続きだ。」
私たちを囲む集団から、1人の男が一歩出てそうモフモフに言う。
男の言葉にビクッ!と震え、一歩踏み出そうとしたモフモフ。
「…嫌だと言ったらどうなるんです?」
しかし、踏み止まり、背中に抱き着いた氷華を庇う様に立つ。
「お前諸共、小娘共も実験体いなる。それだけだけだ。」
男の冷淡な言葉に、モフモフは私と氷華を一瞬だけ見て、啖呵を切る。
「あんたたちが欲しい、僕の力を見せてやる…!!」
人ではない、生物としての力、殺気を放つモフモフ。
「面白い、見せてもらおう、出来損ないの力を…」
男がニヤリと笑うと同時に、囲う集団の輪が狭まり、私たちに近付く。
数人、私たちだけを狙う者たちもいる。
連中の目的も考えも分からないけど、モフモフは悪い奴じゃない。
「氷華、全部ヤッちゃっていいよ。」
私は妹に、そう言った。
なにより、
「誰の娘に喧嘩売ったのか、教えてあげないとね…」
氷華は私の言葉に従い、一瞬で連中を凍り付かせるだろう。
しかし、そんな桁違いの能力者である妹さえ足元にも及ばない最強の存在。私たちのママ。
私たちの家族に喧嘩を売るということは、そんな最強のママを敵にすると教えてやる。
2度とモフモフに手出しさせない。
こいつは我が家の
絶対零度の世界、氷華によって一瞬で氷漬けにされた集団に腰を抜かしたモフモフを私は撫でて言った。
「アンタのこと気に入ったから、アンタは今日から百道家のペット。安心していいよ、世界一安全だから。」
「ママが怒らなかったら…」
思わず出た言葉だったけど、そう言った後、ブヮッと汗が吹き出る。
最大の懸念、母の許可を完全に忘れていた。
「とりあえず、おじいちゃん家に帰ろうか…」
そもそも、モフモフのサイズ的に、我が家では生活出来ないと気付いたのもこの時だった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
「それで、ホテルが空いてなかったと…」
食うだけ食って帰っていった筈のレインボークリスとお付の女性が我が家の門を再び叩いた。
「行く宛が無くって…」
そうバツの悪そうに言うレインボークリス。
「なに嘘ついてんだ!!お前が宿代無くな程食べ歩きなんかするからだよ、このバカ娘。」
「ごめんなひゃい…」
レインボークリスのホッペを引っ張りながら怒鳴る女性と泣きながら謝るレインボークリス。
あれだけ食べたというのに、まだ食べたのか…
「「一晩泊めて下さい!!」」
結局彼女たちは朝食まで食べていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます