第293話 分かれば良いんです。分かれば。


全く、平和の女神と自負しておりますわたくしが人間種であるエルフをわざわざスサノオの餌にする様な人物に見えてしまっているという事実に失礼な話ではなかろうか?


そしてわたくしは聞き逃さなかった。当たり前である。


ん?今何でもするって言ったよね?


「では奴隷契約など致しませんからどうぞエルフの里へ帰って下さいまし。移動が面倒だというのならばスサノオ、黒竜を馬代わりに使わせて差し上げましてよ」

「そんな殺生なっ!!私を殺す気ですかっ!エルフの国には戻りたくありませんっ!そもそも奴隷になってあげると言っているのですっ!黙って有難く頂戴したらいいじゃないですかっ!」

「えぇーいっ!うっとおしいたりゃありゃしませんわっ!!いいからわたくしから離れなさいっ!!」


そしてこれ以上頭を抱えそうな問題を抱え込みたくない為、奴隷にするつもりは毛頭ない為さっさとエルフの国へ帰るように言うと、このエルフは何を思ったのか自分を奴隷にしろとわたくしにしがみついてくるではないか。


その余りにも鬱陶しさからエルフの頭を押さえてわたくしから早く離れる様に言うも、このエルフ、エルフの癖に無駄に握力や腕力が強く───ではなくてわたくしのか弱い身体では引きはがすことが出来ない。


あぁ、か弱い身体で産まれてしまったわたくしにはとてもとても…………と言いますか、良いから早く離れなさいよっ!!抱き付かれてホールドされてる腰部分が痛いんですのよこの馬鹿力エルフッ!!


「嫌ですっ!!奴隷にしてくれるって言うまで私は帰りませんっ!!それにドラゴンさんもあなたに言えば奴隷にしてくれると言ってましたっ!!」


そして件のエルフはわたくしから離れるどころか更に腕に力をいれて抱き付いてくる。


もはや新手の魔物であると言われても信じてしまいそうですわっ!!夜泣き爺ならぬ夜泣きエルフの称号を与えましてよっ!!


「分かったっ!分かりましたから一度離して下さいましっ!こうも抱き付かれると、この状況では何もできませんわっ!」

「わ、分かれば良いんです。分かれば」


そしてついにわたくしが折れると件のエルフは『ぱぁー』と表情が明るくなった後「ふふん」と偉そうに鼻息を吐く。


何でしょう、何故だか分からないのだけれどもわたくしの闇の力を開放してしまいそうですわ。


「全く、それで、どうしてあなたは奴隷になんかなりたいんですの?そのままエルフの国で平民として暮らした方がよっぽど良いと思うのですが」


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