第291話 どっちなんですのお母様っ!?

「お母様ぁぁぁあああああああああああああ…………っ!!!!」


そしてわたくしはお母様に首根っこを掴まれ、そのまま引き摺られて部屋の外へと消えて行くのであった。





「だ、大丈夫かフラン………?」


わたくしがお母様に拉致………では無くて有り難いお言葉を約小一時間ほど頂戴し、この部屋へ帰って来るや否やわたくしを見たノア様が心配気にわたくしへ聞いてくる。


「はい、何でしょうか?ノア様。わたくしは至って健全で御座いますわ。ですがわたくしの身を案じて出たお言葉で御座いましたら有り難く受け取らして頂きますわね」


そしてわたくしは深窓の令嬢の如くか弱くも柔らかく、そして愛くるしさもある微笑みをノア様に向ける。


その微笑みを向けられたノア様、そしてその場にいるレオやシャルロッテさん、ミシェル様にリリアナ様まで何故か顔を真っ赤にしていらっしゃるのですが、恐らく笑いたいのを我慢しているのでしょう。


その優しさがわたくしの胸をチクチクと刺される様な感覚に陥る。気持ち的には五寸釘程の針で。


しかし何故かわたくしのお母様はというとこの地獄の様な現状を、主にノア様の表情を確認するや否や、なぜか『大変満足ですわっ!』と言うような、そして何かを成し遂げた様な表情をしているのでしょうか?


やはりお母様は鬼なのでしょうか?いえ、違いますわ。思っただけで、いえ、思ってもおりませんわ、お母様。


だからその怖い顔をわたくしに向けないで下さいましっ!と、いうよりも何でわたくしの考えている事がお分かりになるのですかっ!?……え?表情に出ている?そんなバカな…、血の繋がった母親だからこそわたくしの表情の小さな変化で分かる?またまたご冗談を………嘘ですわよねっお母様っ!?お母様ならばあり得そうだから怖いのですわっ!どっちなんですのお母様っ!?


「良いですこと?フランさん。今のフランさんであればいずれ大きな鯛を釣って来ると、わたくしは期待しておりますのでその調子で頑張って来るのです。しかし、わかっておいでですわよね?立ち振る舞い、言葉遣いは気を付ける様に」


そしてお母様はわたくしの耳元でそれだけを言うとお父様とお兄様を連れて部屋から出て行く。


コレはわたくしだけ鯛を釣れていないという事に対しての嫌味で御座いましょうか?あれは竿が悪かったのであってわたくしは悪くないと思いはするも反論する勇気等サラサラなくわたくしはただただ頷くしか無いのが歯痒いですわ。

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