第290話 首根っこを掴み取る

お母様、何をそんなに怒ってらっしゃるのでしょうか?わたくし、全くもって分かりませんわ。


お母様が怒ってらっしゃってる原因があるとするのならばやはり先程のスサノオの態度であろうか?


やはり初対面の方々がいる中で自己紹介どころか方々へ挨拶も無し、トドメとばかりにエルフの国から、本人は貢ぎ物とは言っていたのですが、恐らく強引に奪ってきたであろう金銀財宝の数々に奴隷と来ましたら、いくらお母様でもお怒りになるのも分かると言うものですわね。


あのお母様の怒り様、あれは何ヶ月も根に持つ奴でございます為スサノオも次お母様にお会いする時は覚悟を決めて来る事ですわね。


「フランさん、少し良いかしら?」

「えっと、そのー、そ、そうっ!わたくしはこれから用事が御座いますのっ!」


あれー?おかしいですわね。


何故だかお母様が能面のような表情でわたくしに話しかけて来ておりますわ。


そしてその能面は、なんとも立派なツノが二本も生えている様に見えるのは気のせいでしょうか?お母様。


しかし、しかしですお母様。


わたくしも本当はお母様との時間を過ごしたいとお思いですのよ?それはもちろんで御座いますとも。


ええ。


しかしわたくしもこれで色々と忙しいんですの。


あぁ、忙しい忙しい、忙しくててんやわんやですわ、てんやわんやですわっ!大事なので二回言いましたわっ!


「我が娘ながらここまで大根役者だと、怒る気も失せてしまいそうですわね」

「でしたらそのまま失せさせてしまいましょうお母様。怒ると身体に悪いと聞きますわ。わたくしお母様のお身体が心配で………ひんっ!?」


この世紀の大女優を捕まえて、言うに事欠いて大根役者などというフレーズに異議申し立てしたい衝動に駆られるもそこはグッと堪えてそのまま怒りを鎮めて頂こうとしたその時、お母様がとてつもない握力でわたくしの首根っこを掴み取るではないか。


「ですがフランさん。それもノア様が居なければという条件が付いて来ますわ。むしろこんな大根役者もビックリな演技、いえ、恥をノアの前で晒したとなると話は別ですわ。先程までの言葉使いといい、当然覚悟は出来ておりますわよね??」

「お母様っ!?お母様まぁぁぁあああっ!!」

「ノア様御一行には少し、いえ、かなりわたくしの娘であるフランさんが御迷惑をお掛けした事をお詫び申し上げますわ。せっかく会いに来て頂き申し訳ないのですがもう少しの間フランさんをお借りいたしますので、お時間を取ってしまいますが、どうぞリビングにでもお待ちくださいますようお願い致しますわ」

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