第272話 峰打ちでしてよ
「そうであるな……初めて抜いた親知らずで作った武器であるからなぁ、ざっと計算して三千年程であるな。今思えば長く一緒に過ごしたものであるな。作られた日が未だ鮮明に思い出せるものであるからつい最近の様に思えてしまうな」
そう言うとスサノオは『はっはっはっ』と笑い出す。
そのスサノオの脳天目掛けてわたくしはすかさずハリセンを叩き込む。
「安心しなさい。峰打ちでしてよ」
「いっ、いきなり何をするのだっ!?」
「何をするのだ、ではございませんわっ!スサノオさんっ!貴方はこの武器をなんだと思っておいでなのですかっ!」
「な、何って、武器ではないのか?一応武器として大切に保管しておったのだぞ?」
「そうですわ。確かにこれは武器ですわね。ですがこれは最早武器であって武器ではございません」
そしてわたくしがそう言い切るとスサノオは『一体何を言っているんだ?』いう表情でわたくしを見つめて来る。
「どうしたのだ?我が妻よ。頭がおかしくなってしまったのか?」
「一言余計でしてよっ!あと妻になる事を了承した覚えは御座いません事よっ!」
「だ、だからそれで叩くでないっ!」
頭がおかしくなったなどと、余りにもあんまりな言いようにわたくしはスサノオの頭を二度三度と叩きながら妻である事も否定していく。
叩くなとは言うものの、言って分からないのであればハリセンで叩かれても致し方ないとわたくしは思いますの。
「良いですかっ!?スサノオさんっ!この武器は長い年月大切に扱われて来たお陰で自我を持つようになっておりますわっ!言わば付喪神に昇華したと言う事でしてよっ!それを、何千年も外にも出さずに暗闇の中一人ボッチにさせてからに………そんなんだからひねくれてわたくしの武器を最初日本刀ではなくハリセンなどと言う物に変化してしまったのではありませんかっ!………え?何ですか?武器さん。それは関係ないですって?大丈夫ですわ武器さん。こんな奴など庇う必要等ございませんわ」
この武器を持った瞬間わたくしはこの武器が魂を宿している事を感じ取った。
そしてスサノオの話を聞き、数千年間もこの世に存在しているという事を聞き、この武器が単なる武器ではなく付喪神でもある事が分かったのだが、おそらくこのスサノオの事である。
付喪神となる程である為、手入れこそしていたのであろうがそれだけであったのであろう。
そのせいでわたくしの手に渡った時ハリセンなどと言う武器をチョイスしてしまう程捻くれた性格となってしまったのであろう。
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