第6話 わたくしが歩む筈だった未来
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ここ帝都マルギス学園は小等学部から中等学部まではエレベーター式かつ上流階級しか通う事が出来ない帝国屈指の学舎なのだが高等部からは狭き門ではあるものの一般からも入学出来る仕組みとなっている。
そしてその一般学部から入学してくるのがこの『君恋』のヒロインでありわたくしの天敵でもあるシャルロッテ・オースティンその人である。
とは言えど流石にある程度の地位と財力が無ければこの学園に入学する事は許されていない為シャルロッテの家庭は帝国でも五指に入る豪商の娘という設定である。
しかし。わたくしこと以前のフランからすればいくら豪商であろうと金持ちであろうとその地位は何の意味も持たなかった。
貧乏であろうと没落寸前で権力すらなくとも貴族であれば人でありそれ以外は人の真似をする生き物でありそれ以上でも以下でもない。
地面を這う蟻や路傍の石等と同等程度として認識していた。
それは一重にあの家庭故のある意味での貴族至高主義英才教育の賜物である。
だからこそその路傍の石が上流階級の男達にあまつさえ恋愛感情を抱き、深い仲になっていく様が許せなかった。
上流階級の血に得体の知れない何か分からない異物が混ざる事に恐怖を覚えたのであり、それはある意味で今まで意識すらしていなかった物を始めて意識し始めたという事でもある。
いわばこのゲームの悪役令嬢が行った数々の嫌がらせ等の動機は恋愛関係の縺れから来る嫉妬ではなく純粋なる恐怖からくる敵対心であったのである。
そもそも恋愛結婚等貴族で産まれた以上は最早夢物語であり政略結婚が当たり前の世界である。
それは言い換えれば動物としての生存本能故の攻撃的行動であったのかも知れない。
そう思えば悪役令嬢であったフランも貴族至上主義による被害者の一人であると言えよう。
もし庶民もまた人間であると知っていれば、見下し嫌悪こそすれどあれ程の事はしなかったであろう。
これが本来わたくしが歩む筈だった未来であった。
そしてわたくしはその未来をぶち壊してみせますわっ!!
そう意気込みフランは力強く学園の門をくぐって行く。
これから注意しなければならない人物、特に注意が必要なのはヒロインも含めたメインキャラクター五名である。
まず最重要危険人物はこの帝国の皇太弟であるノア・ル・マルギスである。
何を隠そう記憶が蘇る以前のわたくしの初恋の男性だったコイツはヤバイ。
百年の恋も氷点下まで瞬間冷却される程ヤバイ。
わたくしの淡い恋心など記憶が蘇った瞬間に凍って砕けて粉々である。
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