第10話 討伐の後

 カツヤが先頭に立って小一刻こいっとき進み、何体かの魔物を倒した。緑色の小鬼がゴブリンとか魔物が出るたびにハーデスが名前や特徴を教えてくれた。ほとんど単体で行動していて相手の攻撃を受けるようなこともなかった。

 「もしかして勇者様は戦場の経験がおありになりますか。」

 ハーデスからの小ナイフを借りて魔石ませきぎ取りにも挑戦していた。

 「いや、生き物をあやめることすら初めてですよ。」

 一番偉い武士の子供を木刀で打ち付けるくらいの想像くらいはしたことがあったが、平和な江戸時代に剣術を披露ひろうする機会などなかった。

 「正直、剣の腕前だけならAランクでも通用するよ!」

 ハーデスは弾んだ声で言った。

 「ハーデスは大袈裟おおげさだけど、マジでちょっときたえたらAランクにもなれそうではあるわね。」

 ヘルセポネも同意した。

 「今日はこれくらにして引き返しましょうか。」

 バルバラが言った。

 「そうだな。無理する理由もないし、また今度だな。」

 ハーデスが同意した。

 「えー何にもしてないよぉ~」

 ヘルセポネが口をとがらせた。

 「いや勇者様の肩ならしだからな。」

 ハーデスが笑いながら言った。

 「んーそうだった、アハ」

 ヘルセポネは首をすくめて両手を上にかざした。(欧米か!)

 カツヤは二人を見て衝撃を受けていた。自分の両親や村や町の子供たちのような心底下らないと思う人間たちとあまりにも違いすぎる。何も知らずにあのままあの村で生きていた未来を想像しただけで悪寒おかんが走った。

 ここの何もわからないが、召喚で呼び寄せられた自分は幸運に恵まれたと思わずにいられなかった。


 ハーデスとヘルセポネとは街の門をくぐった所で別れた。バルバラと教会まで帰り、昨日泊まった客間に戻った。すぐに小間使いこまづかいが湯の入ったたらいとタオルと着替えを持ってきてくれた。

 1日の汚れを落としながら、以外に疲労が貯まっていることを自覚した。肉体的というより気疲れなのかも知れない。

 わりとボリュームのある食事を先程の小間使いが運んでくれて、胃が満たされるとすぐに就寝した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る