第18話 ヴァンパイア

「いらっしゃいませ~」

 漆黒のスーツに、漆黒のマントを羽織り、真っ白な牙を光らせたお客様が来店した。

「おや、珍しい。西洋からのお客様だ」

「確かに、いつも日本の妖怪でしたから珍しいですね」

 そのお客様は適当に商品を物色している。

「何か、お探しですか?」

 日本語が通じるかどうか不安だったが話しかけてみた。

「あ、吾輩、トランシルヴァニアからの留学生で、ヴァンパイアです」

 ヴァンパイア、吸血鬼か。

 彼の光る牙を見て、少し怖くなった。もしかして血を吸われたり……?

「は、はい。どんな本をお探しで?」

「吾輩、ヴァンパイアなのに、ちゃんと血が吸えず、ご飯はいつも輸血パック。色んなヴァンパイアが出て来る本を読んで勉強したいのです」

「ああ、なら、こちらはどうですか?」

 俺は『吸血鬼すぐ死ぬ』という漫画を探して来て見せた。

「すぐ死ぬ?」

「この漫画の主人公の吸血鬼は、ほんの些細なことで、すぐ死ぬんです。他にも色んな吸血鬼が出て来て面白いですよ。お客様に合った吸血方法も見つかるかもしれません」

「ほう。それは良さそうですな。買います」

「ありがとうございます」


 あやかし古書店では漫画も取り扱っております。

 海外からのお客様も大歓迎。


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