第253話 テクニシャン・ミロク


家に帰りついたご主人はお疲れなようで、ソファーにグダァと寝転んだ。


俺は労いを込めてご主人の背中に乗り、前足でもみもみしてあげてるのだ。


「うにゃ?」


強さは大丈夫ですか?


「あい…」


「にゃ?」


凝ってるところはございませんか?


「あい…」


うむ、どうやらだいぶお疲れらしい。


それも肉体的にではなく、精神的に疲労MAXのようだ。


何時もなら俺のマッサージ屋さんゴッコに付き合ってくれるんだけど、今日は元気が無いらしい。


これは猫を吸わせねばならない!


まずはぷにぷに肉球で体をほぐしながらヒールをぶちかまして体を整えねば!


「うにゃ!うにゃ!うにゃ!」


揉むべし!揉むべし!揉むべし!


うむ、永遠とやってられるな!なんだか俺がリラックスしてきたぞ?リラックスしてるときにもみもみするから逆説的にもみもみしてたらリラックスするのだろうか?


幸せホルモンが笑顔の時に分泌するから、無理にでも笑えばホルモン分泌する的なものだろうか?


人体…いや、にゃん体の神秘。


「………」


あれ?ご主人寝てない?今日はスペシャルマッサージコースでこの後猫吸いがついてるんだけど……


まぁ寝た方が回復はするので寝かせとこう。


「うにゃにゃ」


俺のテクニックでご主人がお休みしちゃったぜ。


夕飯作成中のグレイに声をかけ、薄手の毛布を出してもらってご主人にかけた。いくら空調が一定でも寝てる人には上に何かかけたい。


寝ると体温が下がるので保温しなきゃ!ご主人が風邪をひいたら大変だ!


とりあえず俺とヤクシだけで風呂に入り、ホカホカの状態でご主人の頭横に丸くなる。


因みに俺は白猫なのでアンモニャイトではなく大福である。透明なボウルに入れば牛乳にもなるぞ!


ご主人は猫画像とかで見るととりあえずやってみて欲しいらしい。隙間からにょろんと出ると猫は液体って本当なんだね!と喜んでた。


それは俺も思ったんだけどな。


猫になって猫の特性とか調べたかったので大変有意義な検証だった。


「そろそろ夕飯が作り終わるし、颯人様を起こして風呂に入らせてくれ」


グレイに言われて仕方なくご主人を起こすのだが………ユサユサしても起きんのだが?


「にゃぁ」


ご主人起きて。


声をかけても揺すっても起きないのでスマホのアラームを鳴らす。


「うぇー?はっ!?朝っ!?」


「にゃん」


まだ夜だぞ。


「キュー!」


ご主人お風呂だって!とヤクシがご主人に言った。


「夜……はぁ、良かった。あ、お風呂だよね?わかった、行ってくる」


アラームのせいで朝だと勘違いして、逆に目がパッチリ覚めたらしい。


ご主人は元気になったのだ!

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