新しい事が受け入れられるとは限りませんことよ?

 まさか、ラグランジュと同じ小説とは。

彼女もナロー系小説が好きみたいです。

幅広く恋愛も私は嗜んでいます。

傍から見る恋愛は良いですわよ。

珍しい動物を見るような気分ですわ。

現実と違い、私自身に危害が確実に加わらないのが違いですわね。

恋愛なんてドロドロで嫌ですわ。

ストレートに愛情を伝えても伝わらない事もありました。

デートを何度もしてもあまりよくないときもありましたわね。

たまに、城下町にある肉のタレみたいな臭いがついてました。

私は偶然ではなく、マリーに連れられたのでしょう。

まあ。

まるで小説みたいですわね。

さておいて。



「硝石が沢山とは」

「お嬢様。リストにあるものは全て買いました。ですが、機材や薬品の一部は調達が難しく、別ルートで仕入れる必要があります」



 あら。困りましたわね。

機材はともかく、薬品までも。

でしたら、一度あそこへ訪れて見ましょう。



「薬品に関しては当てがあります。カルディナルへ一度訪れてみます」

「かしこまりました。お供します」



 さあ。いざ、カルディナルへ。

期待を込めて馬車を出しました。

ついでに持って帰れるように。

それに貴族の馬車なら怪しまれませんし。

門が見えてきましたわね。



「おう、アンネ嬢じゃねえですか。何か用で?」

「このリストにある、薬品と機材を調達してほしくて。お願いできますかしら?」



 和やかな空気が変わりました。

怠そうで死んだ目から生気の入ったどこか冷たい目に。

紙を見ながら、しばらく考えていますわね。

ですが、一瞬迷った感じを逃すわけにはいきません。



「調達に成功すれば、無論お支払いいたしますわ。多少色は付けましてよ」

「どのくらいだ」

「10%程」

「安いな、もう少し欲しい。60%」

「25%はどうでしょう」

「それじゃあダメだな、40%でどうだ?」

「でしたら妥協で35%はどうでしょう」

「分かった、それで手を打ちまさあ。つき次第連絡しやす」

「ええ。お待ちしていますわね」



 用は済みました。

後は屋敷に帰って彼女たちの様子を見るとしましょう。




「アンネ様ぁ!たしゅけて……」

「まあ、これは」



 着いて早々、やりましたわね。

今度は望遠鏡を改造して、ついに壊しました。

金でケチケチしているようではいけません。

ですが。



「ねえ、ラグランジュ。事は済みました。さて、今度は何をするのつもりなのかしら?」



 壊した望遠鏡を何とか直そうとしていますわね。

今変な音が聞こえましてよ。

修理をしながら、彼女は答えます。



「テルースの周りにあるサテレスである白き岩が何で離れないのかなと思って」



 さて。私たちが居る星の名はテルースと言い、その周りに回るものをサテレスと呼びましてよ。

白き岩は白き岩です。遠いですが丸いそうです。

望遠鏡でそう見えた方々がそう言うのです。私も実際にこの目で見ました。

ええ。綺麗でしたわよ。



「それは引力が働いているからですわよね」

「そ、それであれば、白き岩がテルースに落ちてきてもおかしくないんです。でも落ちてこないんです!不思議じゃないですかあ!」

「言われてみると確かにそうですわね。望遠鏡はリストにありましたし。ですが、ラファの頼まれた事はしましたの?」

「リストに硝石があったはずです。それを混ぜれば威力は上がるはずなんです!」


 どうやら、何かあるようですわ。

火薬の威力が上がる、しかも魔法ではない。

楽しみですわね。



「おっほほほほほほ!」



――ナロウ歴1785年 5月13日 夕刻

記録なし

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