本当の意味で無から有を生み出す事は難しいですわね

 ラグランジュさんが来て何日か経ちました。

彼女の錬金術は目を見張るものです。

例えば数式や、理論。

もちろん、証明するためにはアカデミーで行かなければいけません。

アカデミーは錬金術師の学校です。

貴族や王族、一部特例の方は王立の学園がありますので、大丈夫です。

その中から私が選ぶ割と印象的な言葉としては。

これです。

「才能とか家柄がない奴はくるんじゃねえ」。

三流な方が言いそうな、というか実際に言っていた台詞ですわ。

今に思えば特待生と言う名の庶民も居ましたし、諸侯の方々も居ました。

スクールライフは楽しかったですわよ。

おっと。

思い出に浸っている場合では無いですわね。

今、屋敷の敷地の一部にあった小屋を彼女の自宅兼研究所にしました。

しているときはとても生き生きしてますわよ。

一日出てこない事もあります。



「ラグランジュ。どうかしら、何かありまして?」

「あ、アンネ様!す、すみません!まだ何も」

「気になさらなくて良くってよ。気長に待ちます」

「と、ところで。そのぉ……」



 そこにラファが入ってきました。

どうやらラグランジュを知っているようですわ。

彼女、意外とフレンドリーな一面があります。

それにしても、相変わらず凛々しい事。

魔法と軍事はこと切り離せないと聞きます。

魔法がある所に軍部あり。

そのくらい言われているそうです。



「ラヴォアジエ殿、例の物は出来そうでありますか?」

「それはそのぉ……」



 チラリ、と私を見るラグランジュ。

あら?私の可憐な顔に何か付いているのかしら?



「銃の改良なんて無理ですよぉ!私は軍に関係ありませぇん!」

「銃の改良?ラファイエット、説明してくださる?」

「アンネ殿……実はですね」



 あまりにも長いので要点だけまとめると。

最近魔物の脅威が上がっており、剣だけでは対処しきれない。

剣の改良となると、材質や鉱石の種類等を変える必要があります。

そこで銃の仕組みを変えて威力を上げてそれを補おうと。

なるほど。

真面目な彼女らしいですわね。



「ラファ。騎士や弓兵、魔法使い《メイジ》ではダメでして?」

「は!魔法使いや弓兵では馬上で攻撃が不可能であります!機動力が必要となる場合、魔法使いは取り分け死亡率が高いのであります!それをどうにかしたくこの場をお借りした次第です!」

「でもぉ、銃なんて前に込めるだけじゃないですかぁ」



 確かに。

銃は前に込めて、火を付ければ後は引き金を引けば撃てますわね。

銃はある程度の射程であれば弓より早く、剣よりも威力があります。

何よりも。

銃の声は時として、大きな音は龍の咆哮に等しい。



「ふふ。でしたら、銃の仕組みではなく。銃の問題を洗い出しましょう」

「わ、分かりましたぁ!まずは火薬の改良からします!」



 動きは速い。

迅速なのは良い事です。



「お待ちなさい。まずはラファとしっかりと話しなさい。彼女の話を聞いてからでも遅くないはずですわ」

「ら、ラファイエット……さん。じゅ、銃の実物を下さい!それを見ないと分かりません、ので」

「分かりました、調達致しましょう。いくつ必要でありますか」

「えぇと……」



 ここで出さずにどうしまして?

そして私は紙を用意させました。



「いくつ要りますの?必要なものをこの紙に全て書き出しなさい」

「予算があ」

「いくら要りますの?」

「えぇと……」



 そしてラグランジュは書き出しました。

……結構欲がありますわね。

あら。



「この小説、私持ってますわよ。主人公が転生して国を作る話でしたわね」

「ほ、本当ですか!い、良いですよね!まず主人公がスライムでしかも古代のボードゲームのような世界で国を作ったり!そのあと色々な国を回ったり!仲間も個性的で特に初期の魔人族の皆さんは好きです!あと!戦いもあって良いですよね!特に敵を大魔法で消し飛ばしたシーンはすごくてこの威力を出すための力はなんと――」



 しばらく、彼女の話は続きました。

ええ。ほんの1時間程。

ラファは少し引いてました。

リストのものは買いましょう。



――ナロウ歴1785年 5月13日

記録なし

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