アカメガシワ(赤芽槲、赤芽柏);Mallotus japonicus

 赤芽柏アカメガシワはトウダイグサ科アカメガシワ属に属する落葉高木。和名の由来は春に出る新芽が鮮紅色であること、そして葉が柏のように大きくなることから命名されています。本州・四国・九州・東南アジアの山野、平地、川の土手などに自生していますが、日本では二次林に多く見られます。本来は熱帯系統の植物でしたが、落葉性を身につけることで温帯への進出を果たしたといわれています。


 春先の新芽と稚葉は、毛が密生していて鮮やかな紅色ですが、成長するにつれて緑色となり、赤色を帯びた長い柄をもつようになります。初夏に白色の花を穂状につけ、秋に軟らかい針がついた果実が熟します。この実は秋に裂開し紫黒色の光沢のある種子を出します。


 日本の代表的な民間薬の一つで、樹皮には、ポリフェノールの一種であるベルゲニン、ルチン、タンニンが含まれていて、胃酸過多、そして胃潰瘍の改善、胃液分泌の抑制、肝臓保護作用などがあります。葉は腫れ物、痔に煎液が用いられたり、乾燥品を風呂に入れて入浴剤として用います。また、日本薬局方に記載の生薬で、樹皮は野梧桐ヤゴドウ、葉は野梧桐葉ヤゴドウヨウと称する健胃剤となります。種子と葉は染料にもなります。若葉は和え物やおひたしにして食べられます。


 十八歳でハンセン氏病を患い、病苦の中、多くの短歌を残したアララギ派の昭和の女流歌人、津田治子の歌集に赤芽柏を詠った作品が残されています。


青樫も赤芽柏も吹きなびけ来れば吾もその風の中 

赤芽柏の広き葉ぬれてゆく見ればほとほと音に立ちて来る雨 

(「津田治子歌集」より)




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