第33話 情報開示②
「その前に私も先輩に聞きたい事があります」
俺が琴音に魔王について聞こうとしたが、琴音は遮り俺に聞きたい事があると言った。
琴音に何を聞かれるかは見当が付かない。
琴音からすれば俺に聞きたい事は、いっぱいあるだろう。
さて一体何を聞かれるのだろうか?
「禁忌って一体何ですか? 遊園地の時、それに黒嶺との会話」
彼奴との会話を聞かれていたが、うん? 琴音はギリギリまであそこにいたのか。
それにしても禁忌か。
まさか誰かに話す事に、なるとは思わなかった。
禁忌の語るとなると、俺は異世界でのあの出来事を思い出すな。
「禁忌か──元々異世界の魔王の力だ」
「え、それって?」
俺は淡々と琴音に禁忌の事を語る。
「俺は異世界で勇者だった。物語の王道みたいに勇者が魔王を討伐しにいく。俺が当時の魔王にトドメを刺した。その時、体に禁忌を刻まれた」
「つまり禁忌は魔王の力何ですか?」
「今の段階ではな、俺ですら全てを分かっていない」
「魔王を討伐したのに、皮肉にも魔王の力を手に入れてしまったんですね」
「魔王の力を手にした勇者。禁忌の勇者と呼ばれ、俺は迫害を受けた」
「先輩はその力を使わないんですか?」
琴音の問いに俺は硬直する。
口は開いてるが言葉を出す事ができなかった。
禁忌の力を使えば、黒嶺に勝つ事はできるかもしれない。
それでも俺は使おうとしなかった。
特に理由はない。
ただ容易に使っては駄目だと、体が危険信号を出しているから使わない。
「聞かない方が良かったですね。それじゃあ魔王についてですね」
琴音は禁忌について納得したのか。
魔王について語ってくれた。
「あの時も言った通り、今の先輩の姿が夢に出てきました。まるでゲームや漫画の世界の様に壊し始めて、その時、脳内に声が聞こえました」
夢の中であるのに脳内に声か。
まるで俺の時と似ているな。
「彼の者、世界を破滅に導く災厄の魔王。または世界を救う英雄」
彼の者!? 琴音の夢の中で聞こえた声と、俺の夢の中に、現れた神は同一人物。
琴音が俺に言った破滅に導く最厄の魔王。
それはかつて異世界で、脅かしていた禁忌の魔王と同じだ。
これは一体何かの因果か。
神と思わしき者の発言──それを信じて、琴音は魔王と呼んだ。
俺は世界に復讐を誓っているし、それを変える気は一切ない。
だとすると前者の世界を破滅に導く魔王。
俺はあの魔王と同じ道を歩もうとしている。
それに今俺は世界中で魔王という扱いだ。
全て、話しの筋が揃ってきている。
と、俺自身の中で話しが纏まった時、俺の脳内に映像が流れた。
「一体何だこれ?」
俺は戸惑いを隠せなかった。
火の渦に飲み込まれた崩壊した街に、一人の男が禍々しい剣を持ち立っている。
横には琴音に似た少女が居り、禍々しい異形の怪物と対面していた。
この光景からすれば、二人の男女対異形の怪物。
「パイ……先輩!」
「あ、どうした琴音?」
「そちらこそどうしたんですか? ぼっとして」
琴音は今の映像を見てないのか? だとしたら俺にだけ映像が流れた。
何か意味があるのか? 全く分からない。
俺が頭を悩ませている時、琴音が俺に頼み事をしてきた。
「お願いがあります。黒嶺を倒して下さい!」
「は……? いきなり何だよ」
「言葉にするよりこちらを見て下さい」
琴音は服のポケットからスマホを取り出し、操作をし俺に見せてくる。
スマホには一つの映像が流れる。
黒嶺と学生達が映っており、「あの不審者、実は魔王だった。俺はその魔王を倒した!」会話をしていた。
黒嶺は学生達の前に豪語をしていた。
あのクソ野郎──本当に腹立つな奴だな。
次の瞬間、俺は信じられない物を目にする。
黒嶺は懐から仮面を取り出し着ける。
その姿はまるで、防衛省に協力している仮面の男と瓜二つだ。
そこで映像は終わる。
「この映像見せて、一体何が問題何だ?」
俺、個人的にはウザいと感じるが、他の人間からすれば英雄だろうな。
「彼奴は先輩や私同様に特殊な力を持っています。それに彼奴の性格的に悪用しますよ」
「俺に頼むのはおかと違いだろ?」
そんな事より俺は琴音をどうすればいい? 情報を手に入れるまでは守り抜くと決めた。
だが、それは俺が琴音だと思っていなかった。
それに神の言葉。
自分の味方を見誤るなか、琴音は一体どっちだろうな。
俺はこの子をどうすればいいんだ? 俺は頭を悩ませる。
「ただあのクソ野郎は、悔しい事に俺を圧倒した。レイの時にもやられぱなしだ。今度は俺が勝つ!」
琴音に向かって宣言する。
琴音の頼みを決して聞く訳ではない。
ただ、これは俺の自己満足のリベンジだ。
ソファの近くにある黒衣のコートを羽織り、廃墟を出ようとする。
その時、琴音が俺に待ったを掛ける。
「待って下さい」
「これ以上何か用があるのか?」
「私も付いていきます!」
「いやくんな。お前は別に戦闘をする事はできない。足手まといになるだけだ」
俺は琴音を冷たく突き放す。
だが、琴音は食い付き、俺にはっきりと言う。
「自分の身は自分で守ります! なので私を一緒に連れて行って下さい」
冷たくあしらっても食い付くか。
それに琴音は結構頑固だ。
自分の身は自分で守るか。
もし、何か合ったら逃げるだろうし連れて行くか。
「分かった。連れて行ってやる。その代わりにあのクソの下に案内しろな」
「はい!」
俺と黒嶺の再戦は目前に迫っている。
今度は負けない──負ける訳にはいかない。
俺はあの男を倒して、再び復讐を続ける……
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