第29話 接戦
「良い気になるなよ」
血を吐きながら黒嶺は言う。
まだ何かを隠しているか? 一番可能性があるのは後ろの光の輪。
俺の剣技の電流を掻き消した。
何か仕掛けがある筈だ。
その仕掛けを俺は戦いの中で見つけだす事が出来るのか? それとも見つけ出さずに終わるのか。
一切の検討も付かない。
だけど、俺はこいつに負ける訳がない。
黒嶺は俺の様子を伺いながら、再び落雷の速さで踏み込んでくる。
気付いた時には俺の懐に入っていた。
手には強く太刀が握られており、上に向かって切り上げてくる。
右手に握っている刃物を太刀の刀身に当て、左足で持ち手の部分を抑える。
黒嶺の顔から余裕の表情は消え、初めて焦りの顔を見せた。
太刀から力を感じる。
どうやら黒嶺は強く握り、力技で太刀を振うつもりだ。
俺の考えは見事に当たり、力付くで太刀が振られ、俺の体は宙に浮く。
次の刹那、黒嶺は低い姿勢で俺の懐に潜り、後ろ回し蹴りをしてくる。
俺の体は宙に浮き、体勢が悪い為、避ける事ができない。
だったらガードをするしかない。
腕をクロスし片膝を付けガードする。
だが、黒嶺はガードの隙間を抜け、回し蹴りが直撃する。
くっ、骨が軋む。
体勢が完全に崩れ、地面に仰向けで倒れる。
黒嶺は追撃する様に向かってくる。
容赦のない太刀の一振りが俺を襲う。
俺は体を回転させ、太刀の攻撃を避ける。
次の瞬間、太刀が振り降ろされた時、地面に亀裂が走り、俺の元にまで衝撃がくる。
左手で地面を強く叩く。
その衝撃で俺は宙に浮き──地面へ着地する。
認めたくはないが、戦闘センスはこいつの方が高い。
「しぶといんだよ! 己はゴキブリか!」
「誰がゴキブリだよ!」
このくそ野郎、失礼にも程がある。
ぶっ殺す、俺は落雷の速さで地面を踏み込み、迅雷迅速の速さで黒嶺を切り付ける。
黒嶺の体から血飛沫が舞う。
速さでは勝っているが、決定的なトドメの一撃がない。
剣技を使うしかないか? だけど、俺はセルピコの様な多彩な剣技は持っていない。
あまり使いたくなかったけど仕方ない。
俺は合掌し詠唱を唱える。
「迅雷の速さで舞い、氷の鋭い一撃で全てを凍らせる。
体内に巡る血液の代わりに、オーラを擬似の魔素に変換し放つ。
俺の新技の擬似魔法。
俺の前方と左右に魔法陣が展開される。
左右には水色の魔法陣、前方には金色の魔法陣。
まず最初に金色の魔法陣から、凝縮された膨大な雷が現れ、追尾する様に左右から氷の礫が生まれる。
俺は黒嶺に向かって指を振う。
次の瞬間、膨大な雷が氷の礫に纏い、氷の礫は黒嶺に襲い掛かる。
黒嶺は太刀を振う構えをしたが、それより速く氷の礫が黒嶺に直撃する。
次の刹那、黒嶺の体は少しづつ凍り始める。
「なっ何だこれ!?」
黒嶺は戸惑い──体を動かす。
だが、黒嶺が体を動かす度に凍り付くのが進む。
もう既に腹部までは凍り付いていた。
「チェックメイト」
俺は指を鳴らす、その直後、黒嶺の全身は完全に凍り付いた。
これが俺の今、唯一の決定打だ。
次の瞬間、俺の体内の内部から何かが逆流してくる。
それはやがて俺の口元にまでくる。
俺はそのまま口に溜まっている物を吐き出した。
「うぅぅぅ、あぁぁぁぁ」
俺は口から大量の血を吐き出す。
それは致死量の吐血。
「い、いやぁぁぁ!!」
琴音の悲鳴に近い叫び声が聞こえる。
くそ……琴音にこんな姿をあんま見せたくなかったな。
それにしても何故、こんな致死量の血を俺は吐血した。
黒嶺の攻撃? それともオーラの使い過ぎか。
全く分からない。
どっちにしろ、体から血の気が引いてるせいで、体がフラフラとする、
次の刹那、パリンっと音が響く。
俺は音がする方に視線を向けると、凍り付いている筈の黒嶺が。
怒り心頭で太刀を構えていた。
さっきのパリンという音は黒嶺か。
あの凍り漬けをどうやったか、知らんが破りやがった。
俺の決定打の一撃ですらこいつには効かない。
黒嶺は多少のダメージを受けているが、俺に比べれば万全の状態。
元々満身創痍で致死量の吐血。
下手すればこれ死ぬな俺。
笑い事じゃないのに笑えてくる。
「満身創痍か? だったら今すぐにでも殺してやるよ」
黒嶺は太刀を逆手に持ち、俺に歩んでくる。
段々とスピードが増し、俺との距離が縮む。
太刀の一振りが俺に襲う。
完全に避けれない、それに防ぐ事すらできないな。
俺は終わるのか? 復讐を果たせずにこのまま死ぬのか。
そんな訳にはいかねぇ、俺はある言葉を出す。
「全て捩じ伏せる」
「あ、何だ?」
黒嶺は分からない様子だった。
直後、俺と黒嶺の間にある空間。
それが歪み、黒嶺は地面に倒れ込んだ。
黒嶺は立ち上がろうとするも、地面に捲り込んだ。
「くそったれが!」
黒嶺は雄叫びを上げながら、立ち上がろうとしてくる。
異能を全快にしても死ぬ事はないか。
と、思ったその時、ブスッと俺には鋭い痛みが走った。
一体何だと思い、痛みする理由を探ろうと体を見る。
俺の腹部から剣の刀身が見えた。
おいおいマジかよ、完全に背後から剣を突き刺された。
「やっと来たのか、遅せぇんだよ!」
黒嶺は立ち上がり、体をボキボキと鳴らした。
俺は後ろに視線を向ける。
すると、そこには俺が殺した筈のセルピコが立っている。
本当きついなクソったれ。
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