第10話 謎のコイン

 俺は地を蹴り、黒衣の人物の眼前にまで、近寄り、刃物を振う。

 黒衣の人物は、軽く上半身を反らし躱す。

 だが、その直後、俺は隙だらけの横腹に蹴りを入れる。

 一瞬の隙にガードをされたが、蹴りは綺麗に入った為、吹き飛んだ。

 吹き飛んでいる最中、黒衣の人物は空中で回転をし、地面に着地する。

 その瞬間、地面には大きな亀裂が入った。

 こいつ俺の蹴りの威力を回転で、押し殺し、地面に逃したな。

 魔法戦も近接戦もできるか。

 それでもな俺に敵わねぇぞ!


「なっ!?」

「初めて声出したな、くそ野郎!」


 俺は黒衣の人物に、刃物を投擲すると、同時に走り出し拳を出す。

 刃物は簡単に避けられたが、拳は見事に相手の腕についている。

 多分、思わぬ動作で驚きが、隠せずに声を出したと思われる。

 だが、こいつの声可笑しい。

 アホほどガラガラな声音をしている。

 まるで、喉に変声機を付けている様な感じ。


「は、離れろ!」


 直後、俺の腹部に蹴りが突き刺さり、数メートル後ずさる。

 この野郎……信じられない程の脚力だ。

 俺が簡単に離される。

 それにしても、こいつ何者だ? 魔法も近接戦もかなり高いレベルだ。

 くそ、横腹の傷が痛む、速めに決着を着けないと、傷がこれ以上に開き──出血多量で、死ぬかもしれない。

 体内の魔素が変な流れを、している為、上手く練って魔法も使えない。

 まじでこいつ、何をしやがった?


「情報処理一杯、一杯って顔をしているな。禁忌の勇者」

「チッ、そんなガラガラの声で言ってくんなよ。お前やっぱり向こうの人間か」

「この声にはこちらにも事情がある。そして君が言う、向こうの人間というのはちょっと違う」

「それはどういう意味だ?」

「教える訳がないだろ。知りたいならばワタシに勝ってみろ」

「ほざけ」


 くそ、こいつ……余計に情報量を、増やしやがって苛立ちが治らねぇよ!

 ──再び同じ動作をし、黒衣の人物との距離を詰める。

 黒衣の人物は来いと、誘って来る。

 俺が禁忌の勇者と、知りながら近接戦を求めるって事は、相当な自信があるみたいだな。

 だけどな、近接戦は俺の土俵何だよ!!

 片足を前に出し、軽く拳を出す。

 黒衣の人物はフラフラし、簡単に躱そうとしていた。

 だが、俺の拳は顔面を捉える。

 その直後、ビューンと男が聞こえる。


「なっ、お、音速のパンチ……?」

「もうここからは俺の独壇場だ」


 黒衣の人物にラッシュを叩き込む。

 黒衣の人物は避けたり、ガードをしている。

 拳のラッシュを喰らっていれば、拳にばっか目がいく。

 そこが隙になり敗北に繋がるんだよ! 拳のラッシュは止めずに、蹴りのモーションをする。

 その直後、黒衣の人物は固まり、俺は蹴りをそのまま叩き込む。


「が、はぁ」


 黒衣の人物は吹き飛び、地面に勢いよく倒れ、悶絶をしている。

 俺は地面に落ちてた刃物を拾い、だんだんと距離を詰める。


「ひ、ひぃぃ!?、や、やめてくれ!」

「おいおい。さっきまでの威勢はどうした?」

「調子に乗ってすいませんでした」


 黒衣の人物は痛みに、苦しみながら少しずつ後方に下がる。


「逃げてんじゃねぇよ。お前には聞きたい事があるんだよ」


 ……黒衣の人物から色々と話しを聞いた。

 その話しの中で、俺が知りたい情報などは一切なかった。


「これでいいでしょうか?」

「ああ、いいよ……じゃあな」


 もうこれ以上に、話しは聞けないと思い、刃物を首筋に合って切る。

 直後、俺の体に血飛沫が舞ってくる。

 刃物を上空に投げ、黒衣の人物に背を向け、刃物をキャッチする。

 次の瞬間、俺は驚愕な物を目の当たりにする。


「何もない……だと?」


 地面には無数の薬莢やっきょうと、自衛隊が倒れている筈。

 だが、俺の目には大量の血溜まりしかない。

 俺は自衛隊を確かに全滅をさせた。

 でも、俺は殺してはいない。

 意味が分からない。

 と、頭を悩ませている時、ジャンヌが悲しそうな声音で、俺に言葉を掛けてきた。


「あ、あの大丈夫?」

「どうした? お前ならば軽口を叩いてくると思ったけどな」

「流石に君の今の状態では言えないよ」

「はっそうかよ」

「後、これ」


 俺は痛む体を動かし、歩こうとした。

 その時、ジャンヌが俺に、コインを手渡してきた。


「なんだこれ?」

「コイン」

「いや、それは見れば分かる」


 一体何故、俺にコインを手渡して来るんだ? 全く分からん。


「これは


 俺はそのコインを貰うか。

 悩んでいたが、ジャンヌは真剣な眼差しで俺を見る。

 考えに考え抜いた結果。


「チッ、うぅぅ、ああ、分かったよ貰う」

「うん! そうして」

「なんでお前は嬉しそう何だよ」


 俺はジャンヌに呆れながら、コインを受け取る。

 ──二週間後。

 自衛隊と黒衣の人物の戦いから、二週間が経っていた。

 その間、世間は騒がれていた。

 それは一つのニュース。


「ニュースの時間です。国から発表があります」


 それは唐突に発表された。


「国家転覆を狙っていると、思われるテロリストに自衛隊は、一時的に敗北をし、防衛省は本格的に動く事を発表しました」


 ニュースはまだ続いてたが、俺はテレビの電源を切り、ソファに倒れる。


「ああ、くそ体が重い」


 あれから魔素は回復する見込みもない。

 それにこのコイン、少し変な模様がある。

 コインには花と双剣の様な、模様が合った。


「そして一番の問題はこの刃物だな」


 俺を襲ったこの刃物から、特殊な気配みたいな事を感じる。

 コインとこの刃物について、詳しく調べた方がいいと思った。



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