第005話 発覚
故郷を出てから数日後、ルークは再び軍に戻っていた。
とはいえ、本部ではなく支部である。
本部は中央都に置かれており、支部はルークの住む国セインツ王国に隣接する3つの国、北に位置する世界最大強国と呼ばれるジークムント王国、東に位置するヴァルム教国、西に位置するローランド公国から戦争を仕掛けられても守れるように置かれている。
なお、セインツ王国の南側は海に面しており、そちらには海軍支部が置かれている。
ルークがやってきたのは強国ジークムント王国に対抗することができように置かれた強国対策支部である。
強国対策支部は当然軍のどの支部よりも戦力を充実してあり、最大規模の軍となっている。
まるで要塞と言わんばかりの施設であるがルークは気にせず、どんどん進む。
入口にいる歩兵たちがルークに気づくと一斉に敬礼をした。
「「「ルーク副隊長!!」」」
歩兵達に答え、ルークも敬礼すると一言訂正してから聞きたいことを聞く。
「もう、『元』副隊長だ。敬礼などいらない。それよりアジス隊長はどこにいる?」
「そんな!?ルーク副隊長は我々の憧れの方です。例えどのような立場になろうとも敬意を払うのは当然です!アジス隊長ですね、少々お待ち下さい」
歩兵の内の1人がそう言うと、アジス隊長の予定を確認する。
「今の時間は執務室にいらっしゃるはずです」
「ありがとう」
聞きたいことを聞いたルークはアジス隊長がいる執務室に向かう。
強国対策支部は支部長兼大隊長を頂点とし、2人の副大隊長、そして9つの隊に分かれている。
大雑把に言うと1つの隊は隊長と2人の副隊長によりおおよそ1万人の兵を指揮している。
ルークは第7部隊の副隊長として戦い続けていた。
(17年前の時点から今までの間中ずっと俺を死んだことにできた人物はアジスしかありえない)
思えば、アジスとルークは腐れ縁とも言えるくらいの長い間柄だ。ルークの才能が開花し始めたのは軍に入ってから数年後、その時のチームリーダーがアジスだ。
ルークの功績はアジスの功績となり、どんどんと出世していった。
(やつは俺が軍を離れることを延ばすために死んだことにしたに違いない)
考えれば考えるほど、怒りが増していく。
その怒りをアジスの執務室のドアに思い切りぶつけるのを必死に堪え、ノックをする。
ドンドンドン
「誰だ?入っていいぞ」
ガチャ
もう耳慣れたアジスの声に従い、ルークは執務室のドアを開けて中に入る。
ルークの姿を見たアジスは、あからさまに喜びの表情に変えて、
「おお!ルークじゃないか!もしかして軍に復帰する気になってくれたのか?」
とても嬉しそうに近寄ってくる。
アジスはもう30代中盤のはずだが、そうは感じられない。
もし、この世界が物語の世界だったら主役になれそうなくらい整った顔をしている。
「・・・いや、そうじゃない」
怒りを押し込めて、ルークは絞り出すように声を出す。
「そうか。ではどうしたんだ?」
アジスがあからさまにがっかりする。
「今日はあんたに聞いておかなきゃならないことがあって来た」
アジスは漸くルークの様子がおかしいことを察知し、身構えるように姿勢を変える。
「・・・何を聞きたいんだ?」
「17年前、何故、俺を死んだことにしたんだ?」
「っ!?・・・そうか、気づいたか」
アジスは素直に認める様子になる。
「言い訳はしないんだな」
ルークが意外そうに言う。
「ああ、お前にだけは嘘はつきたくないからな。もしお前がそのことを聞いてきたら言い訳をしないと心に決めていた」
アジスの言葉にルークは何も言わず、仕草で先を促す。
「おそらくお前が察している通りだ。俺はお前の才能に嫉妬した。お前も知っての通り、当時の俺たちに必要なのは何よりも戦闘力だった。しかも、お前は志願兵ではなく徴兵だ。通常であれば数年の任期を終えれば軍を離れてしまう。俺はいっそのこと自分の出世のためにお前を利用しようと考えた。外向けにはお前を死亡したことにし、軍向けにはお前が徴兵でなく志願兵ということにするために手を回した。自分がしたことに後悔はするつもりはない。だが、ルーク・・・お前にはとても申し訳ないことをしたとずっと思ってきた」
そういうとアジスは涙を流しながらルークに向かって深々と頭を下げた。
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