第10話勇者の旅

「ところで、まだ聞いていなかったのですが、これからどこに行くのですか?」

「ん? 王都」

 本当は目立つと面倒だからあまり王都には近づきたくないが、目的を果たすためには仕方がない。

「買い出しか何かですか?」

「まさか。買い出しなら村でも、それこそ近くの町でもいい。王都でしかできないお前の修業がある」

「しかし、王都まで歩きで三日はかかるのでは?」

「ん? いや、走れば一晩で着くぞ?」

「は?」

「魔力循環の要領で魔力で身体を強化する。後は日頃の身体作りと、根性だ」

「一応聞いておきますが、本当にやるんですか?」

 アリアが顔を引きつらせて聞いてくる。やりたくないのがひしひしと伝わってくるが、師匠には時には厳しさも必要だ。

「これは俺の実体験だが、ほとんど休めずに何日も敗走したことも、何日も戦い続けて剣を振り続けたこともある。この修行は必ずお前の役に立つ」

 アリアの目指しているのは勇者だ。前勇者である俺に必要と言われては断り切れないのか、渋々了承した。

「じゃあ、行くぞ」


 日も沈んだ真夜中。俺たち二人は走り続けていた。

「はぁっ……はぁっ」

 アリアは息が上がっている。俺は久しぶりではあるが、日頃必要最低限は筋トレをしているので、流石にまだ衰えてはいないようだ。

 そんなことを考えていると、遠くに明かりを見つけた。おそらく焚火の火だ。

 冒険者なら野宿なんてザラだが、もちろんそれは盗賊も同じことだ。

 さらに、ゴブリンやオーガ、オークなんかの知性のある人型の魔物は焚火くらいはできる。

 とはいえ、こんな街道で焚火をしてるってことは……。

「アリア、止まれ」

「ふぁ、ふぇ?」

 もう前もよく見えていなさそうなアリアに少し息を整えさせ、俺たちはゆっくりと、わざと足音を出して焚火に近づいて行った。

「おうあんちゃんたち。冒険者か?」

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