第20話 橋本さんとお友達デート
今日はゆっくりと起きた。昨日は水島さんとプールに行って、門倉さんと同じアクシデントが有って、また二人だけで会う事を約束させられた。
あれって、俺が悪い訳じゃないけど、波が来た時、腰を持ち上げてやったから彼女達が俺にくっ付いて来て、紐が解けたり、水着がずれたりしたんだ。だからって全く責任が無いという訳じゃあ無いか。
それにしてもだ。なんでせっかくの夏休みが今年はこんな事になっているんだ。
明日だって橋本さんと会う事になっている。取敢えず映画見ようと言われているけど、ちょっと強引で凄くスキンシップが好きな子。
もう少し、引いてくれると嬉しいのだけど。まあいいや。クラスメイトとして友達として親しくなったと思えば。さて、今日は洗濯と掃除、それに買い物をしたら、午後から道場に行こう。
稽古をしていると、女の子達の事を考えなくて済む。
翌日、俺は午前九時四十五分にデパートのある駅の改札の外に着いた。約束は午前十時、まだ橋本さんは来ていない。
スマホを弄りながら待っていると、ホームからのエスカレータで降りてきた彼女を見つけた。
可愛い花が半袖のワンピース一杯に散らしてある、とても夏っぽい洋服だ。胸を上手く隠しているけどそれでもその大きさは良く分かる。
「工藤君、待ったぁ?」
「まだ、約束の時間前だよ」
「そういう時は、今来たばかりとか言うと嬉しいな」
「そうなの?」
どういう意味だろう。
「早速、行こうか」
「橋本さん何見るか決めているの?」
「うーん、今上映している面白そうなものを見ようよ」
確かにそれでいいかもな。橋本さんが見たい物を選べばいい。
映画館は改札を出て直ぐに右に行き、一階のイベント会場の横にあるエスカレータを乗って二階に行く。更に少し歩くとそこもイベント会場になっているけど、その右にあるエスカレータを上がれば映画館だ。
「工藤君、まだ夏休みだねぇ。子供向けのイベントが一杯だよ」
「夏休み最後のイベントって感じだね」
「そうだねえ」
両親に連れられた小さな子供たちが楽しそうに遊んでいる。もし工藤君と結婚出来たらこんな風に出来るのかな?
「橋本さん、顔赤いけど、暑いの?」
はあ、全く工藤君は、私をほんとクラスメイトの一人位にしか考えていない。だから今日は、このチャンスを生かすんだ。
映画館のフロントに着くと大勢の人がいた。ここも子供たちが多い。
「工藤君、あれ見ない?」
有名な俳優が火事現場で活躍する奴だ。
「いいよ」
「じゃあ、早速チケット買おうか」
俺達はチケットの自動販売機に行ってフロアシートマップを見ると
「わーっ、ほとんど埋まっている」
「でも、後ろの二列なら空いているよ」
「仕方ない、工藤君ここでいい」
「俺は構わない」
私は、工藤君とチケットを買って、場内に入ろうとした時、
「橋本さん、俺ちょっと先に済ましてくる」
「分かった。ここで待っている」
私は工藤君がトイレに行っている間、周りを見ながら待っていると、あれっ、水島さんが男の人と場内に入って行く。ふーん、水島さん彼氏いたんだ。
あっ、これ利用できるかも。そうすれば水島さんを脱落させられる。それが出来なくても工藤君の頭の中からは消えるはず。
「橋本さん、ごめん。中に入ろうか」
「うん!」
あれ、何でこんなに元気いいんだ。この映画楽しみにしていたのかな?
映画は、中々の迫力だった。燃え盛るビルの中から何人もの人を助け出すという内容で迫力があった。
途中、橋本さんが、思い切り俺の手を掴んで来たので、離そうと思ったけど、結構力を入れていた。彼女の顔を見ると映画に見入っている。仕方なしにそのままにしておいた。
映画を見ている時、夢中になって工藤君の手を掴んでしまった。でも彼は避けなかった。少なくても彼は私が手を繋ぐことを拒まないという事か。これは良いかも。
映画が終わりフロントに戻って来ると
「工藤君、もう午後十二時半だね。お昼食べようか?」
「そうしよう」
俺達は、再度改札の方向に戻って近くにある〇ックに入った。例によって混んでいる。時間的に仕方ない。
「工藤君、私席取るからベーコンレタスバーガーセット、飲み物は〇ックシェイクお願い。料金は後で精算ね」
「了解」
俺は橋本さんがどこの席に着くのかを見ていると、外が見えるガラスの向こうに水島さんとこの前、ここで一緒に歩いていた男の人と手を恋人繋ぎして楽しそうに話ながら歩いて行く。
ふーん、水島さん、彼氏いるんだ。俺なんかと会っていなくてもいいのにな。俺と会っている事、彼が知ったら面白くないだろうに。まあ、これからは俺の方から引くか。彼に悪いし。
俺は十五分位並んで二人分のセットをカウンタから受け取ると橋本さんの待つ席に行った。
「ごめん、思ったより長くなっちゃった」
「全然構わないよ」
橋本さんは、自分が注文したセットを自分のテーブルに広げながら
「さっき、水島さんがいた」
「ああ、俺も見た」
「デート中なのかな?」
「さあ、俺には関係無いし、彼女ほどの人なら彼氏位いるだろう」
「そうだね」
工藤君も見ていたんだ。それに彼の言葉から水島さんには関心が無いのが分かった。彼の心の中に水島さんが入る可能性はない。やったね。
俺達は、見た映画の感想話しながらお昼を食べ終わると
「工藤君、この後、デパートで洋服買いたいんだ。良いかな?」
「全然、構わないけど」
「じゃあ行こうか」
ふふっ、デート、デート。工藤君とデートしている。嬉しい。
俺は、橋本さんに連れられてデパートの女性洋服売り場に来ていた。彼女曰く、秋物を買うのは遅い位だけど、とにかく見てみたいという事らしい。
ちょっとウィンドウショッピングの様にしながら二人で歩いていると正面から何と水島さんがあの男の人と歩いて来た。しっかりと恋人繋ぎしている。
「「あっ!」」
橋本さんと水島さんが同時に声を上げた。
「あれ、水島さん、彼とデートですか?」
橋本さんが水島さんに声を掛けた。
「えっ、いやこれは」
「里奈、誰?そっちの男はこの前見たけど」
「二人共私のクラスメイト」
「そうなんだ。君なんて名前?」
「工藤です」
「俺は宇田川って言うんだ。何となく気になるから言っておくけど、里奈は俺の彼女だ。勿論深い関係だ。だから変な気を起こさないでくれ」
「えっ!」
水島さんが思い切り驚いている。
「弘樹、何て事言うのよ。貴方とは友達なだけでしょ。工藤君、勘違いしないで」
「里奈、何言っているんだ。今からだって行くんだから…」
「ばか、何言っているの。工藤君、この男の言っている事嘘だから」
「はあ、里奈どうしたんだよ。いつものコースじゃないか。なんでそんな事言っているのか分からないけど、行かないなら俺帰るわ。じゃあな」
男は、水島さんと繋いでいた手を振り払うとそのまま一人で帰ってしまった。
「ちょ、ちょっと待って弘樹。工藤君、後で電話する。ごめんね」
水島さんが、男を追いかけて行った。
「なに、あれ?一方的に二人で好きな事喋って行っちゃった」
「俺にも分からない」
水島さん。あれだけ可愛いんだ。別に彼が居てもおかしくないだろうに。なんであんな態度取ったのかな?
「工藤君、あの二人は忘れて買い物しよう」
「うん」
俺が気にしても関係無いか。
不味い、不味い。本当に不味い。まさか、工藤君とばったり会うなんて。それも最悪な会い方。
弘樹があんな事言わなければ、後でいくらでも言い訳できたのに。あれじゃあ、工藤君から見捨てられてしまう。何の為に今まで、努力して来たのよ。
弘樹は勝手に帰って行ってしまったし。それになんで工藤君と橋本さんがデパートにいるの?おかしいよ。全然おかしいよ。
とにかく、今日の夜工藤君に電話して上手く説明しないと。
―――――
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