4/29 未来、政治、薄毛 ※ライトレ使用の三題噺(制限時間15分)
私は私の未来を思うと不安で眠れない。
事の発端はあの日の夜だった。「一生幸せにするから結婚してくれ」と迫られ、当たり前のようにゴールイン。思えば全てが仕組まれた展開だった。同じ会社、同じ部署、からの突然の告白。嬉しくなかったと言えば嘘だが、それが本当に彼でなければならなかったのか、と聞かれると返答に困る。もはや伝統芸能の壁ドンで視界を塞がれた状況だから事実上断りようもなかった。流れを作られたような交際は今思えばデートの皮を被った執拗な価値観の共有のようにも思える。そして、家賃が浮くのに一緒に住まない理由が分からないという常套句で丸め込まれた同棲。後はあれよあれよでゴール、してしまった。
これが本当に正しいゴールなのか、半ば無理やり参加させられたゲーム。本当はこのゲームは複数のゴールがある仕様で、もっと私に合ったゴールがあったんじゃないか、いやあったはずだと私は最近はいつも思っている。
私は酷い女なのだろうか。いや、生理的な違和感を無視して偽善を取り繕う方がもっと酷いだろう。もし私が逆の立場だったら、そっちの方が耐えられない。
彼の薄毛が進行しつつあること。顔がなまじイケメンであるがゆえに余計に哀れに見える。洗面所に育毛剤の山を並べて無駄な抵抗。もういっそ坊主にした方がいいんじゃないと思うのだが、服に合わないだの社会人としてどうかと思うだの、俺がやったら明らかに輩だだのいい訳ばかりしている。
ああ、男らしくない。なんでこんな人と付き合ってしまったんだろう。
結婚という制度が悪いの? それを肯定する政治が悪いの? その政治なしでは回らない社会が悪いの?
ああ、分からない。もし時間が戻せたら、もしあのあの日あの時あの場所に戻れたら、私は壁ドンを金的で抜け出して、どこかのふさふさの髪のフツメンと今では温かく平凡な、少なくともこんなことでは悩まない生活をしているだろうに・・・・・・。
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