第20話:これを連携と呼ぶ

 俺――とソニア嬢――は、モンスター達の集団を前に、呆然と立ち尽くしていた。


 その向こうにはレッドフォード家の屋敷が見える。

 更に向こうでは大規模な火災が起きているようだ。煙が立ち上っている。


 内心で煙の元はレッドフォードの屋敷ではない、というのがわかった。


 もっと南の向こう側にある、何か大きな建造物が燃えているようだ。


(グスタフとジークは大丈夫なのか……?)


 とにかく、急いで屋敷に戻って聞いてみよう。

 緊急事態っぽいから、ソニア嬢を連れて行っていいのかどうか迷うが、放置しておくわけにもいかない。



 集団に少し近付き、じっと見つめる。


(集団ってのも……5、6体の集団が数えきれないほど集まってるって感じだな)



 俺はひとつの『帰宅方法』を思いついた。


「すみません、ソニア様」


「なに、よ……もう、なんなの……」

 ソニア嬢は胸を押さえながら息を切らしていた。


 かわいそうに。


 東の辺境に来た途端、盗賊に襲われたと思ったらモンスター集団を目撃だもんな。

 普通の心臓してたら逃げ帰るところだぞ。


「俺はここを直線に帰るんで……えーっとソニア様は……迂回してついて来てください」


「なによ、迂回してついて来るって!こんな荒地の、そこらにモンスターがいる土地で!」


 抑えめの声でクレームが入った。


 まあそうなんですけど。

 他に思いつかないっていうか。


「じゃあ……つかず離れずの距離でついてきてください」


「舐めないで!私は守られるだけの女じゃない!あんたはさっさと道案内すればいいの!」


 駄々っ子みたいなことを言う(かわいい)。


 しかしここで言い合っててもしょうがないか。

 本人がそうしたいって言ってるワケだし……。


「では行きますか。でも守らせてください。貴方になにかあったら兄上……と、あなたのご家族に合わせる顔がなくなりますから」


「なくてもいいわよそんなの」



 妙にトゲあるな?

 俺もう嫌われた?


(まあ好かれる要素は無かったか……)


 でもなあ、中身はおっさんだけど、外見はすごい爽やかな若者のはずなんだよなぁ。



「じゃあ、一緒に行きましょう!よろしくお願いします」

 努めて明るく、連携を提案した。


「魔法は期待しないで」


「となると、槍ですか」


「……そうよ」


 なるほど、槍レベル育成中なのか。


「では、可能であれば私が攻撃した後に槍で攻撃してください。行きましょう!」


 俺は剣を抜き、駆けだした。


「ちょっとあなた、馬じゃなきゃ追い付けない速度で走らないで―――ああもう!」



 最初に立ちはだかったのは、オーガの集団だった。

 こいつは再生能力を持つ、かなり頑丈な耐久力が特徴だ。


 ソニア嬢を守りながらは無理だな。

 突っ切ってしまおう。


「〈滅閃・走駆〉!」

「〈二段突き〉!」


「ゴァァァァァァァァァ!!?」



 最初の標的にこだわらず、さらに走る。

 どうせ倒せてないし。

 次は1体でうろついている剣を自在に操る悪魔、イビルブリンガー。


 1体でよかった。

 聖属性の攻撃なら、怯ませるぐらいできるだろう。


「〈クロスラッシュ〉!」

「……〈払い打ち〉!」


「ガァァァァァァァァァ!!?」



 今度は空飛ぶ魔人、ガルーダである。頭部と翼は鳥だが、他は人間のようだ。

 今までで一番厄介かもしれない。

 飛べるというのはそれだけで強いが、あいつは魔法も使える筈だ。


「〈暗闇の太刀〉!」

「くっ……〈方天撃〉!」

「〈七星破衝〉!」


 ソニア様が槍で援護してくれるので、それにも合わせて連携できる。

 思ったよりゲーム内で言うところの『速さ』が育ってるみたいだな。

 一度の連携中に一人で2回も技を繰り出せるとは。


 これはソロじゃ分からんからな。



「ソニア様!あと半分ぐらいです!」


「これで……まだ、半分……?」


「すみません!でも止まれないので、このまま行きましょう!」


「わかってる……わかってるわよ……」

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