第5話 変化の兆し
週が明け、良太は新たな活力を持って会社に向かった。「職場デスマッチ」での勝利は、彼に自信を与えていた。
オフィスに到着すると、上司が声をかけてきた。
「加藤くん、最近いい調子じゃないか。何かあったのか?」
良太は一瞬躊躇したが、思い切って「職場デスマッチ」のことを話すことにした。
「実は、『職場デスマッチ』というビジネスコンペに参加していまして...」
上司は興味深そうに聞いていた。
「へぇ、面白そうじゃないか。会社の仕事にも良い影響があるかもしれないな。頑張れよ」
上司の言葉に、良太は安堵と同時に、さらなる意欲を感じた。
その日の夜、良太は上杉とオンラインで次の戦略を話し合っていた。
「次は何をテーマにする?」上杉が尋ねた。
「そうですね...」良太は考え込んだ。「前回は高齢者向けでしたが、今度は若い世代をターゲットにしてみるのはどうでしょうか」
「なるほど。具体的には?」
「例えば...学生向けの就職支援アプリとか」
上杉は少し沈黙した後、「それ、いいかもしれないな。俺も就職活動の時、苦労したからわかる」
二人は熱心に議論を重ね、新しいアプリのコンセプトを練り上げていった。
「AI技術を使って、学生の適性診断や企業とのマッチングを行う。さらに、面接練習機能も付ける」良太がアイデアを出した。
「それなら、VR技術を使って実際の面接環境をシミュレーションすることもできるな」上杉が付け加えた。
良太は目を輝かせた。「素晴らしいですね!これなら前回以上の企画になりそうです」
二人の息はどんどん合っていった。良太は、上杉との協力がますます楽しくなってきていることを感じていた。
翌日、良太は仕事の合間を縫って新しい企画のプレゼン資料を作成し始めた。彼の態度の変化は、周囲の同僚たちの目にも明らかだった。
「加藤さん、最近イキイキしてますね」同僚の一人が声をかけてきた。
良太は少し照れくさそうに笑った。「ええ、新しいことにチャレンジしているんです」
「へぇそれは素晴らしいですね。私も何か新しいことを始めたいと思っていたんです」同僚は興味深そうに言った。
良太はその瞬間、何かを思いついた。「そうだ、一緒に参加してみませんか?」
同僚は少し驚いた様子だったが、「本当ですか?ぜひ詳しく聞かせてください」と興味を示した。
良太は「職場デスマッチ」について簡単に説明した。同僚の目が次第に輝いていくのが見えた。
「面白そうですね。私も参加してみたいです」
良太は嬉しくなった。彼の変化が、周囲にも良い影響を与え始めているのを感じた。
その夜、良太は上杉に報告した。
「上杉さん、会社の同僚も『職場デスマッチ』に興味を持ってくれました」
「そうか。広がっていくんだな、これ」
上杉の言葉に、良太は何か大きなものが動き出しているような気がした。
週末、良太は久しぶりに友人たちと食事に出かけた。話題は自然と「職場デスマッチ」のことになった。
「へぇ、そんなことやってたんだ。良太、最近なんか変わったと思ってたよ」友人の一人が言った。
「そう?」良太は少し照れくさそうに答えた。
「うん、なんか自信に満ちてるっていうか...生き生きしてる感じ」
友人の言葉に、良太は自分の変化を改めて実感した。確かに、以前の自分とは何かが違う。毎日が充実していて、未来への希望に満ちている。
「職場デスマッチ」は単なるコンペティションではなくなっていた。それは良太の人生に新しい意味を与え、彼を変えつつあった。
翌週の月曜日、良太は新たな決意を胸に会社に向かった。オフィスに着くと、彼は上司に直談判することにした。
「課長、少しお時間よろしいでしょうか」
「ああ、いいよ。どうした?」
良太は深呼吸をして言った。「実は、新しいプロジェクトの提案があります」
上司は興味深そうに良太を見た。「ほう、聞かせてくれ」
良太は「職場デスマッチ」で培ったアイデアを基に、会社での新規プロジェクトを提案した。若者向けの就職支援アプリの開発だ。
上司は真剣に聞いていた。「なるほど、面白い案だな。具体的な計画書を作ってくれないか」
「はい、必ず」良太は力強く答えた。
その日の夜、良太は興奮気味に上杉に連絡した。
「上杉さん、会社で新しいプロジェクトの提案をしました。『職場デスマッチ』のアイデアを基にしたんです」
「おお、そうか。良かったじゃないか」
「はい。これも上杉さんのおかげです。一緒に企画を練ってくれて、ありがとうございます」
「いや、俺こそありがとう。お前のおかげで、仕事が楽しくなってきたよ」
上杉の言葉に、良太は胸が熱くなった。二人の関係は、単なるコンペのパートナー以上のものになっていた。
良太はパソコンの前に座り、新しいプロジェクトの計画書作成に取り掛かった。彼の頭の中は、アイデアで溢れていた。
かつては単調だった日々が、今では可能性に満ちていた。良太は、自分の人生が大きく変わりつつあることを実感していた。そして、その変化を心から楽しんでいた。
夜遅くまで仕事をしていても、疲れを感じなかった。むしろ、新しいことにチャレンジする喜びで心が満たされていた。
良太は窓の外を見た。夜空に輝く星々が、彼の明るい未来を示しているかのようだった。
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