第363話 親友へお願い
4月上旬立花家、承と望の部屋。
もう寝よ?って電気消した室内で、
望『…ね、兄ちゃん。あたしさ?今年受験じゃん?』
向こうのベッドから望が話しかけてきた。
『…そうだな。』
あぁ、望がもう受験なんだってちょっと不思議な気分。
俺たちが一生懸命思い出作った中3の一年…もう望もそんな学年かぁ。
望『…あたしね…北翔高校…行きたいなって思ってるんだ…。』
『え?北翔って私立じゃん?宏介の高校だろ?』
俺は耳を疑った。だって私立ってブルジョワジーの行く学校!
※偏見
望は北翔高校の偏差値、割と新しい学校で綺麗で設備の良さ、進学校で毎年結果出してどんどん評価が上がってる事、テニス部が県内屈指の強豪な事、ターミナル駅だから乗り換え無しの三駅で登校も苦にならない事。親友の芹ちゃんも志望している事、…宏介くんもいるって北翔の良さを語った。
聞いてて、
(北翔行きたいんだな。問題はお金。)
望『…って感じかな?
兄ちゃんはどう思う?』
俺は…
『北翔行けば良いと思うよ。
行きたい学校があるならそこへ行けば良いと思う。』
望『ふふー!兄ちゃんならそう言うと思った!
…でもね一個?まあ問題もあってね?』
は?言わせねえよ?
承『…お金なら心配するなよ。
兄ちゃんが一緒に父さんと母さんに頼んで説得するし、足りないかもだけど俺のバイト代全部出したって良い。シフト増やしてもいいし!』
望は一瞬黙ったあと大笑いし出して!
望『兄ちゃん?私立ってさ?めっちゃお金かかるんだよ?
うち正直お金無いし?兄ちゃんのバイト代ぐらいじゃ…』
『わかってる!でもなんとかするから!』
もう眠気なんて飛んじゃってベッドに腰掛けて望の方を向いて話しかける。
望は常夜灯でうっすら見える顔がくしゃくしゃになるほど笑ってて。
望『話し最後まで聞いてー!
あのね、スポーツ推薦で受験ほぼパス出来る以外にも学費免除や経費学校持ちの「特待生」って制度があるの。
北翔からそのオファーがあったのね。』
俺は息を呑む、うちの妹すっげ!
そこまで…!私立の強豪校から学費や諸々諸経費出すからうちの高校に来てください!って言われたって事でしょ?…ただ成果を求められるしスポーツ漬けの大変な日々になるって事だけはわかる。ただ学費免除は正直魅力…。
『望がんばったもんなぁ…。』
女子中学生では県内屈指の選手だって聞いているし、香椎さんもそう言ってた。
それでも不安はある。
望『まだ決まった訳じゃ無いよぉ!
今月末の祭日に、北翔高校のテニス部へ練習招待されたのね?
実際にどんなか、どんな事してるか、設備は、あとお昼食堂でご馳走してくれるって!』
『いやいや飯どころじゃないだろ。』
望『そうだね、きっと動きや技術や性格などすっごく観察される。
夏の大会の結果が1番だけどその練習招待も大きなウェイト占めるだろうね?』
ちょっと別世界の話しで俺にはなんとも助言出来ない。
望は笑って、
望『心配しないで!ガツンと「あたし」見せてくるー!』
俺は向こうの望のベッドに腰掛ける。
望は横になったままにまにまして俺を見てる。
俺は望の生え際当たりを撫でながら、
『家計心配して特待生狙ってるんだろ?』
望『…それだけじゃ無いよ?テニス部強いとこ進学したかった。
北翔なら強さ、通学距離、申し分無い。』
…宏介くんも居るしって望は付け加えた。
俺はわしわしって強く望の髪の毛をかき回すと、
『私立だろうがなんだろうが兄ちゃんが後押しするから。
望の思う通りにするんだよ。』
望『兄ちゃん妹に甘いね?』
『弟にも甘いぞ。』
望は嬉しそうに喉鳴らして笑いながら、
望『…兄ちゃんがお金の心配すんな!俺が頼んでやるしバイト代で出してやる!って格好良かったよ?そうゆう漢気みたいのもっと全面に出した方が良いと思うな。』
こいつうぜぇ!
恥ずかしい事言っちゃった自覚はあるんだよ。
望『あたしはブラコンだけど、兄ちゃんはバッキバキのシスコンだね?』
『うっせ、もう寝ろ。』
俺は望の髪の毛をくっしゃくしゃにして抗議する望を笑って自分のベッドで横になった。けど一つだけ不安があった。
☆ ☆ ☆
数日後、斉藤家
『それでね?望がさ?家の為にお金かからないで進学する為に特待生を勝ち取るつもりなんだよ…!』
宏介『…望は家族思いな子でしょ?』
『だけどさ?健気じゃない?俺高校受験の時、近くて公立ってだけで東光に決めた。それが間違ってたとは思わない。けど…特待生って大変なんだろ?』
宏介『…そう聞くね?うちのスポーツ課に友達居るからその辺聞いて見るわ。』
『頼む。』
☆ ☆ ☆
数日後、再び斉藤家。
宏介『そうだね、スカウトされて全中とかの成績如何でオファーが変わるみたい。
完全学費免除に寮費食費無料とか、諸経費が学校持ちとか若干特待生間でも待遇差はあるみたいだけど総じて結果が求められること、退部したら学費は自腹になるし怪我もサポート程度で自己責任だし。管理は厳しくなるよね。』
宏介は心配そうに言った。
俺も思った事を言うよ、
『それで楽しくテニス出来るのかな?
特待生で行く事は良い、むしろ家計的にも助かる。
でもさ?それで大好きなテニスを嫌いになっちゃうようだと…俺そこが心配。』
宏介も頷きながら、
宏介『…学校の知名度や実績の為の傭兵みたいなところあるもんな。
俺も心配、望自由なタイプだろ?
特待生なんて結果が全てだからストレスなんじゃないかな?』
俺は最初から危惧してた不安を親友に打ち明ける。
『…望さ?
『心配しないで。ガツンと「あたし」見せてくるー!』
って言ってた…俺超心配!』
俺は頭を抱えた。
宏介も額に手を当てて、
宏介『あの猛獣…変装、乱入、襲撃、なんでもありだぞ?
特待生以前出禁になるかも…!』
俺は本題を宏介にお願いした。
『宏介、練習招待の日に望を北翔まで送ってくれない?
こないだの特待生の諸々や心構えとか色々教えてやってくれないか?』
宏介は笑って、
宏介『…俺も部活だから良いよ。
それよりキチンと釘刺しておかないと…大惨事!』
だよね?
俺は
…一応、仕出かすのを心配で宏介を付けたってバレるのはアレだから、ターミナル駅複雑で時間間に合うか心配だから送ってもらうって事にしたんだ。
⭐︎ ⭐︎
クロス回でのちほど宏介の方で迎えに来る話が更新されます。良かったらそちらもどうぞ!
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