第256話 兄とクレープとラケットと【side立花望】

文化祭が終わった!

私はクラスの出し物で傾いたかぶいたよ!

去年より慶次の歌倍にして望リサイタル!って呼ばれたもん!

親友の委員長ちゃんも諦めて今年は全面協力!

クラスのみんなにお願いして粘った甲斐あったよ!

※なんのかんのみんな望に甘いです。


1日目は母さんとひーちゃんが来てくれた!兄ちゃんは高校の文化祭。

昨日2日目朝に代休の兄ちゃん来てくれて、昼近くに香椎先輩と小幡先輩来てくれた!


小幡『望は自由ね…。』


香椎『望ちゃんらしい。』


ふたりにテニスの道具の事を色々相談した。

さすがお姉さんで詳しく参考になった…!

って言うのも!購入予定があるからなのです!



そして今日は昨日の文化祭の代休!前々から兄ちゃんが約束してた通り!

私のテニスの!ラケット買ってくれるのー!

209話 夏休みの終わりに 参照!



代休だから平日でひーちゃんは幼稚園で行けない。


ひー『ぼく、いきたかった…。』


承『…ひーちゃん死にそうって意味に聞こえるからやめて?』


って言ってた。兄ちゃんは昨日から死にナーバスだな?


最初9月予定だったんだけど、体育祭や文化祭や諸々で遅くなっちゃった。

でも兄ちゃんはシスコンだからさ?

私とお出かけ楽しみにしてたみたいでさ?

兄ちゃんは文化祭終わって帰って来たら何か考え込んでてね?今日は気分転換になると良いね。


そういえば兄ちゃんとお出かけ、久しぶりー!

電車に乗ってターミナル駅に向かうよ!

新川駅で同級生に兄ちゃんと一緒ってからかわれるけどなんで?兄妹じゃん?

なんでそんな言われるん?

私は真面目な顔で家で兄弟と一緒じゃ無い?私兄ちゃんと布団並べて弟真ん中で3人でよく寝るよ?って言うと微笑ましく見られる…?なんでだ?



まあ、いいや。

ターミナル駅に着き、兄ちゃんはカードでお金を下ろしてた。

すごい、大人みたい!


ターミナル駅にもスポーツショップはあるんだけど、少し歩いたバスターミナル付近に県内有数のテニスショップがある。

そこへ向かいながら兄ちゃんの奢りでクレープ食べて?兄ちゃんの本屋寄って?



11:00頃テニスショップへ着く。

ふふー!お金無いけどテンション上がる瞬間!

兄ちゃんもわかる!俺もスパイクとか買って貰う時テンション上がる!って共感してくれた。


私はこれでも県大会勝ち上がって地方大会ベスト8位まで進めた選手なのね。

でも、流石に道具の差を感じて好きなテニスだから兄ちゃんに相談したら買ってくれる!って言ってくれたのが発端なんだけど…ずっと安物のアルミのラケットを使ってて、ガットを張り替えるって事すら去年初めて知った。



お店に入り、早速ラケット!ラケット!

兄ちゃん?予算って…どれ位なのかな?

…兄ちゃんが一生懸命にバイトして買ってくれる。

私はそれが誇らしく、嬉しい。

でも、高額だろうから本当に申し訳無い。ちょっと良いやつ!ちょっと良いやつ欲しいよ!

我が家の財政事情から両親に相談しづらいこの問題を相談した兄ちゃんはまったく躊躇わずに買う!って言ってくれた。

兄ちゃんが前に父さんの話で、



『愛ってなんだ?躊躇わない事!』


って言ってたのを思い出す。

私は兄ちゃんに愛されてるなぁってニマニマしちゃう。

兄ちゃんはさ、シスコンなんだよね!



ラケットはちゃんとすると高い物、正直私はラケットに詳しく無い

妹のお願いに躊躇わずに応える兄ちゃんにお返しもしたい。

ふふー!私には策があるんだなぁ!

お店に入り少しすると…。




香椎『お待たせ、望ちゃん!…あれ?承くん?!』


承『え?!香椎さん?!』


ふふー!こないだひーちゃんが香椎先輩を呼んだの見てやられた!って思ったのね?その役目はあたしだったー!って。

お呼びしました!何でも詳しい!香椎先輩!



兄ちゃんにテニスラケット買って貰ったお礼に香椎先輩との時間をプレゼント!良いとこであたしは、


『早速、新しいラケット試したい!』


って、先に帰っちゃうの!

どう?冴えてるでしょ!


ふたりはモジモジしながら俯き加減にチラチラ相手を見ながら少し赤くなって話してる…中学生か!

本題終わったら好きなだけイチャついて良いから!今はラケットだよぉ!



香椎『ウイルソンはねコントロールが…

ヨネクススは剛性が強くてうんぬん…』


はあ、なるほど…。

試用出来るモデルもあるから時間をかけて何本かスイングさせてもらう。

うん、良いな。これも良いなぁ…。

あ!これしなる!香椎先輩の選んでくれた2本目の物がすっごいしっくりくるなぁ。


私は飽きずに何本もスイング!スイング!


チラッと見るとふたりはクスクス笑いながら話してて楽しそうに微笑んでいる…!

終わってからしてよー!



私はコントロール重視で柔らかな打感のあるウイルソンが気に入った。

特にこのラケット。すっごい良い!

きっとラノベで主人公が運命の剣に出会う時きっとこんな感じなんじゃ無い?

色は薄い紫で…なんかすっごい綺麗で見た目も感触も剛性もすっごい馴染む!


先輩が何かに気付く。


香椎『ああ!承くん!そう言えばご予算は?

私なんにも考えずオススメしちゃった!

…何にも考えずって予算考えずに良いものって意味ね?ちゃんと望ちゃんのこと考えてるよ!』


私は焦る、先輩の金銭感覚はちょっとあたしと違う、


『…先輩、お嬢様じゃないですか?

やばい、このラケットいくら?』



私も下調べして、平均的な良いものが2、3万円って感じだって知ってる。

だから25,000円前後を考えている。

恐る恐る、試用コーナーのそのラケットの値段を見る。

そこには…。



5万円…!ゆきちっちが5人?!

ゆきちっちで戦隊ヒーローできるよぉ!

ガットの張り替えやら何やらでもちょいプラスなんでしょ?


やば!危なかったー!

ちゃんと値段は確認しなきゃだよね?

先輩はさぁ、お家お金持ちでお嬢様だからそうゆうとこ無頓着なの。

良いとこなんだけど怖いところでもあるよね。

良い夢見たな…。でも良いラケットはいくらでも探せばあるし!

ラケットを戻し、違うものを見繕おうとすると、


承『望、それで良いの?』


は?兄ちゃん?香椎先輩の前だからって格好つけないで?5万って(笑)

兄顔引きつってんじゃないの?って思って見ると、

むしろ、微笑してた。

お値段に脳を破壊されちゃったのかな?兄の心配をしてると、



承『香椎さん、お願い!

ここに10万円あるよ。これでラケット以外の靴?

シューズや試合の服?余ればなんかオシャレ可愛いジャージとか見繕ってくれないかな?』



『ちょっと何言ってるかわからない…。』


なんで?何でそんな大金?

兄ちゃんは恥ずかしそうに、


承『宏介の家に行く時目の前の中学校のテニスコートを覗く時があるよ。

兄の欲目なんだけど望が1番声出して、元気に動き回って、動きが良い。

…でも、周りの娘が可愛いカラフルな練習用のジャージ?試合用のウェア?みたいなの着てるのに?

…うちの望は…いつも体操着。』


兄ちゃんは悔しそうだった。香椎先輩は黙って聞いてる。

体操着以外着てるのも香椎先輩のお下がりだしね…。


『え?女子のテニスコート覗いてるの?通報案件だよ?』


話を逸らそうとするけど、兄ちゃんはのらない、

先輩の方を向いて、



『香椎さん、望はね、両親におねだりをしないんだ。

両親が頑張ってるのを見てるから、お金無いの知ってるから、ひーが大切だからひーにお金使って欲しいって。

そんな望が俺におねだりした。

いくらかかったって構わない。その為に夏休みに約束したのにこの11月まで我慢したんだから。

足りなきゃもう少し下ろしてくる。』


私は兄ちゃんの顔が直視できない。

兄ちゃんはだって欲しいもの羅列してたじゃん!

部屋にテレビ欲しい、タブレットあったらな?HDDレコーダーあると良いよね?あの!線の無いイヤホン欲しい!きっとえっちいDVDとかだって欲しいはずなんだ。なのに…。

香椎先輩はすっごい優しい目で私たちを見つめて、



香椎『任せて?アガるウェアやジャージと靴とその値段で収めるから!』


承『香椎さんが来てくれて良かった!本当助かるよ!』


私は泣いちゃった。

楽しくて楽しくて、兄ちゃんに申し訳無くて、香椎先輩が可愛いでも値段を考慮したウェアを、機能性に優れたジャージを選んでくれる。

着せ替えのように私は衣装が変わる。

それを先輩と兄ちゃんが可愛い!可愛い!って褒めてくれる…。



私はずっと泣きながら選ぶ。

先輩の機転と会員カードやクーポンのおかげでこんなに色々買ったのに兄ちゃんの予算10万から飛び出さずに買い物を終える。

私は嬉しくってまた泣いちゃう。

ガットの張り替えと調整1時間でやってくれるって言うからバスターミナルのレストランで3人でパスタセットを食べた。

兄ちゃんは足りなくてピザとサラダを追加してた。



ずっと泣いてるあたしを兄ちゃんが心配してくれる。

気にすんな、超似合ってた、1番望が可愛い。ラケットもカッコイイね、ラケットにウェア、ジャージ色合わせたんでしょ?

泣いてるあたしを気遣ってずっと話かける兄ちゃんに先輩が優しくて微笑みながら諭す、


香椎『承くん?

望ちゃんは兄ちゃんの気遣いや懐の大きさが嬉しかったから泣いてるの。…良いの。

悲しくて泣いてるんじゃないんだよね?嬉しいんだよね?』


先輩は上手く言えないあたしの気持ちを代弁してくれた。私はコクコク頷く。

暖かいココアを飲んで、一息入れて3人で色々話すと時間はあっという間に過ぎちゃう。


ラケットを受け取る!

嬉しくて嬉しくてギュッて胸に抱いちゃう。

兄ちゃんありがとう!先輩ありがとう!

私は何度もお礼を言った。


バスターミナルの近くでターミナル駅に戻るのが億劫だからバスで帰ろうか?って事になった。


私は当初の計画を思い出した…!

あ!2人っきり…。


あたしは先輩に小声で言う、


『せんぱい…。』


香椎『なに?望ちゃん?』


『あたし、今日ほんとはラケット買って貰ったらすぐひとりで帰って、兄ちゃんと先輩をふたりっきりにしてやろう!って企んでたんです。』


先輩はあら?って顔で先を促す。


『でもね、今日はダメ!今日は兄ちゃん譲ってあげられない。

うちの兄ちゃんは最高にカッコいい…。


…ごめんね。

あたし兄ちゃんの妹で良かったなぁ。』


香椎『…そうだね、そう思うよ。』


先輩はまたすっごい優しい目であたしを見つめて、頭をなでなでしてくれて。


『良いお兄ちゃんだもん、当然だね。

でも、良い妹だからお兄ちゃんも惜しまないんだよ?』


私はまた、泣いちゃってふたりの間でおじゃまむしなんだろうけどはしゃいではしゃいで、バスの座席でふたりに挟まれ寝てしまった。

私は迷惑なことに香椎先輩に頭を預けてうとうと夢うつつ。

頭の上でふたりの声がする。


『…かわいいね?』

『…じまんのいもうと…』

『…うらやましい…』

『…れいなさんのおかげ…』

『…ぶんかさい…かわったこと…』

『…いろいろ…たいへん…』


最後にふたりは話せたのかな?

バスが止まる、先輩はうちより手前で降りちゃう。

先輩が優しく、私を起こす、


香椎『こら、起きなさい?おてんばちゃん?』


私は寝ぼけて、


『…お…ねえちゃん…?』


ふたりはびっくりして顔を見合わせて笑い合う。

寝ちゃってたんだもん!しかたないでしょ!


…あたしにお姉ちゃんは居ない。

…でも、でももし?先輩がお姉ちゃんになったら素敵だなぁって夢うつつに思った事は口に出せない。

口に出したら叶わなくなる気がしたから。




私はその日、ラケットをいつまでも眺めていた。

ラケットが嬉しい!でも兄ちゃんの気持ちが1番嬉しい。

あたしは世界一幸せな妹だったんだよ。


それをひーちゃんが見てる。


ひー『ねえちゃんよかったね?』


『ひーちゃん、ひーちゃんも家族や大事な人の為に惜しまない兄ちゃんみたいな漢になるんだよ?』


ひーちゃんはくりくりおめめをキラキラさせて、


ひー『ぼくはにいちゃんみたいなおにいさんになりたいな!』


あたしは兄ちゃんにして貰ったようにひーちゃんに惜しまない。

それが兄ちゃんとの約束、立花家の伝統なんだ!


あたしはラケットと兄ちゃんに誓う!

いつも、いつまでもテニスに対して真っ直ぐ向き合い続けること!


☆ ☆ ☆


望はその日買って貰ったラケットを長年愛用した。

大事に使い、ケアも怠らないし勝負の試合は必ずそのラケットで出た。

その後、ラケットを新調しても、そのラケットが破損しても、老朽化して使えなくなっても生涯そのラケットを手放さなかった。




☆ ☆ ☆

最近重い話や外伝が荒れた話ばかりで作者のラブなコメが不足しております。

よって23〜25日まで話ちょっと先取り!ちょっと話飛んじゃうんだけどクリスマス前後の甘い話を書かせて頂きます。

申し訳ありませんがよろしくお願いします。


もし立花兄妹良かったよ!って方は♡、☆是非よろしくお願いします!(久々)


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