第10話 下校の誘い

中学生になり新クラスになったが唯一の友達宏介も別のクラスで俺はぼっち。

まだ部活が始まっていないので終わりのHR後すぐに帰宅できる。


別のクラスの宏介を待って帰ってもいいのだけど宏介の家が中学校の3軒隣なので一緒に帰る意味が無い。校門出て1分しないでバイバイするのだから。


もたもたクラスにいてもまた絡まれるから早く帰りたい。

さっさと帰って弟の光くんに会いたい。まだ赤ちゃんみたいなもんだからまだ意志の疎通は出来ないけど唯一の癒し。



『立花くん!今ちょっと良いかな?』


香椎さんが話しかけてきた。

学生服の香椎さんは大人っぽく見えて綺麗だった。

憧れの子が話しかけてきてくれたけど先程の陽キャたちを香椎さんが居なければ御せない自分が情けなくって合わせる顔がない。



『さっきはありがとう香椎さん、何か用事?』


『クラス委員長の仕事の事だよ!打ち合わせしたいんだけど良いかな?』


確かに必要だから二人で諸項目を確認した。会議の進行、授業の最初と最後の号令、提出物のまとめ、伝達事項を皆に伝える大体そんな所かな?

二人で話しているとクラスメイトはジロジロ見てくる。香椎さんは元々可愛いから目を引くけど中学生になって綺麗も加わった気がする。

それに人気者の香椎さんと一緒にいると目立つ。



打ち合わせと役割分担の相談をしているとだんだん皆下校していき夕方の教室に二人きりになった。

何となく話すことがなくなり静まりかえる教室に西陽が差し込む。

沈黙すると意識してしまい香椎さんの顔が見れなくて目を逸らすとメモを取っていた香椎さんの手元に目が行った。


『香椎さん、そのボールペンって?』


『ああ!このボールペンはね、前にクリスマスプレゼントで男の子にもらったんだよ?』


『あー。ビーフシチュー3杯食べた奴?』


恥ずかしい。香椎さんはシルバーの飾りがついた薄いピンクのボールペンを撫でながら微笑んだ。


『まだ使っててくれたんだねー。』


『うん、飾りも色も可愛くって気に入ってるからずっと使っているんだよ♪』



嬉しいなあ。



『私のこと考えて選んでくれたって聞いて嬉しかったよ?プレゼントはくじだから私に当たらない可能性があったのに♪』


『恥ずかしい…。』


『一個だけ聞いてもいい?あの後デパートでこのペンの色違いを4色あるのを見たんだけどこの色が一番良かった、他の色も素敵だったけどこの色が一番好き!なんでこの色を選んだのかな?』



『その時はこの色しか無かったんだよ。』



『台無し!聞きたくなかったよ!』



二人で笑った。



『せっかくだから途中まで一緒に帰ろう!』


『いいよ。』


打ち合わせが終わって香椎さんの提案で途中まで一緒に帰った。

小学校の頃は別方向だから初めて一緒に帰った。いや女子と初めて一緒に帰った

何もないだろうけど緊張した。たわいもな話しかしてないけどすごく楽しい。


別れ際、香椎さんは言った。


『立花くんは変わらないね?クラスを良くしたいよね?

私も気持ちは一緒だから委員長頑張ろう!』



香椎さんは高嶺の花で普通の自分は釣りわない。

俺の憧れる武将のような男だったらどうだろう?そこまでじゃなくっても…

もし、もしクラス委員をやり遂げたら香椎さんの隣に立てる資格を得られるかな?


クラスの前途は多難だけど精一杯のことをするって誓った。




『香椎さん大人っぽくなったなあ、俺は変わらないけど。』



ぽつりと呟いた。

ーーーーーーーーーーーー

承と別れた後の香椎さん


『変わらないって言ったけど立花くん大人っぽくなったなあ。』


ふたりとも同じ感想。

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