第8話 後ろから隣へ
あっという間にあっちゃんの転校していく日は近づいてくる。毎日悔いないよう全力で遊ぶが情緒不安定だった。笑う、しょんぼりを繰り返していた。
そしてその日が来た。
毎回終業式の日なんて通知表のこと気にしたり長期の休みに何するかワクワクしたりするのに今年は終業式なんて来て欲しくなかった。
去年はクリスマスパーティーとかはしゃいでいたのが嘘みたいだった。
終業式後にHRがあって通知表が手渡されてそれが終わると担任が神崎厚樹君は今日が最後の登校で転校する事を改めて言った。あっちゃんは笑顔で壇上に上がりみんなに挨拶をした。
『みんな、今までありがとう!俺この学校で過ごしたこと忘れない!本当にありがとう!』
HRが終わり壇上のあっちゃんにみんな駆け寄った。
今までだって転校する子は居たし、それは寂しかった。でもあっちゃんはクラスの中心だったから泣いてる子もたくさんいた。香椎さんの友達のあっちゃんと仲良くなりたかった子はボロ泣き。
みんな思い思いの言葉をかけている、ありがとう、忘れないよ、落ち着いたら連絡してね?人だかりが出来ている。
でも俺は動けない。
だんだん別れが済んでいく、黒板前の壇上にできてた人だかりは少しずつ減ってきた。
何を言えばいいのだろう?何と言えば良いのだろう?俺は壇上に行けなかった。
気づくと香椎さんがそばに居た。
『良いの?』
『良くない!ありがと!香椎さん!』
あっちゃんのいる壇上へ向かう。
『承…。』
『俺あっちゃんに感謝してる!言いたいこといっぱい考えたけど全部忘れちゃった!』
『そうかあ。じゃあ思い出したら教えてな?』
万感の思いを込めていつものように、毎日のように交わした言葉を口にした。
『いつになるかわからないけど
「また明日!」』
『おう!
「また明日」』
グーパンぶつけ合ってバイバイした。
あっちゃんはお母さんが迎えに来て車で出発した。
みんなで見送って一人去り、また一人去り俺一人になった。
と思ったら宏介が居た。何も言わないで居てくれたのが嬉しかった。
『俺、いっつもあっちゃんの後ろをついていくだけだった。でも次に会うときには隣で歩く男になりたい。』
『そうだな。』
宏介は余計なことを言わない。じゃあね!って挨拶して終業式後の荷物を抱えて家へ帰る。
あっちゃんがこの街に居ないだけでいつもの帰り道。
『また明日』が来るまでに俺は恥じない男になるって誓った。
帰り道に泣いたつもりはなかったのに涙がボロボロ出ていて家に着くと妹に見られて指をさして笑われた。
こうしてあっちゃんはこの街を去っていった。
あっちゃんは新しい連絡先を伝えていかなかった。あっちゃんはそうゆうところあるよなあ。わざとか本当に忘れたのかどっちもありうる。
でもきっとどこへ行ってもうまくやるだろう俺のヒーローはそうゆう男なんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
承帰宅時、望(妹、2才下)もちょうど帰ってきたところだった。
「にいちゃん泣いてる?泣いてるー!」
『笑うがいいさ…。』
「そう?おかーさーん!にいちゃん泣いてるー!泣いてるよー!」
超笑われた。解せぬ。
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