第25話 あしこちゃんしか勝たん

 ため息をついてからきびすを返すと、僕はトボトボと自宅のほうへと向かって歩き始める。

 僕の家は駅前の商店街をつき抜けてしばらくいった住宅街にあり、駅前まで出てきてしまうと本当は遠回りだ。

 しかし、せっかくのあしこちゃんとの逢瀬をどうでもよい四つ角などで切り上げる必然性を感じ得ない僕は、毎度ここまでやってくる事にしているのだ。

 夕方の騒がしい商店街をそぞろ歩きなどしながら何とはなしに、あしこちゃんは確かに痛い娘ではあるものの頭が悪いわけではないわけで、あのようなその場しのぎの適当な言説などいつでも看破し僕を糾弾できたのにも関わらず、あえてそうせず泳がせたのはなぜなのかという事を真面目に考えてみる。

 これはすなわち、彼女が僕に激しく好意を抱いている結論結果なのではないのだろうかという桃色の珍回答が脳裏を素早くよぎる。

 しかし、それを脳内に沸いた虻を叩き落とす要領で即座に否定した。

 そんな自分にのみ都合よく考えるから、皆犯罪に走るのである。気を取り直して、

「あの時の説明でひとまず納得いったのだろうけれども、何となく不穏な空気を感じてかまをかけてみたのではないだろうか?」

という推測を導き出してみた。

 悪くない気もしたが、しかし、彼女にあれだけの堂に入った本格的かまかけが行えるとも思えない。

 思えない、などと得意げにほざいたところで実際やっているのだから、自分の内部規約を速やかに変更するべきではあるが、しかし、どうにも腑に落ちない。

 腑に落ちない、などと無駄な抵抗をしたところで実際やっているのだから、自分の脳内モデルの変更に速やかに着手すべきなのではあるが、しかしどうにも解せない。

 などとグルグルと無駄で無意味な思考劇をダラダラ繰り返していたがどうにも収まりがつかなかった。

 どのみち結論など出ようもなければ出す意味もたいしてないだろうし、どうしても知りたければ明日学校でズバリ本人に問いただしてみるだけだ。

 多分訊かないと思うけど。

 と無責任に思考を停止し、あしこちゃんのスカートが翻った時、太ももが一瞬見えて嬉しかった、とか、並んで歩いている時いい香りがした、とかそういうさらに意味のない事を思いながら帰路につき、そこそこに幸せな一日を締めくくったのである。

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