第7話 変化する心

 目を覚ました時は見慣れない天井であった。


 体は動かないし、瞼も重く、左目が少し開くくらいだ。


「ぁ……」

 口の中も喉もカラカラで声が出せない。


 一体何が起きたのか、もう一度目を閉じて考える。


(確か私、ローシュ殿下を庇って……)

 色々な事を思い出していくとむかっ腹が立ってきた。


 要するにローシュ殿下、いや、ローシュのせいでこんな目に合ったのでは?


 デートの誘いがなければ、あんな風に突き飛ばされなければ、こんな怪我もしなかったのに。


 頭がずきずきと痛い。


 切られたのか殴られたのか、そう言えば血がいっぱい流れてたなぁ。


(……このままローシュの婚約者でいていいのかしら)

 王族を守ることは嫌じゃないけれど、彼は本当に命を賭ける存在?


 疑問に思ってしまうわ。


 私を顧みることもなく、刺客の前に押しやった彼の行動は許せるわけではないし、そもそも最近の彼の行動はマイナス続き。


 (いくら何でも私を蔑ろにしすぎよ)


「許せない……」

 思わず漏れた微かな声に気づいたのか、誰かが近づいてくる気配がする。


「エカテリーナ様、目が覚めたのですね」


「あっ……」

 うまく声が出ないので、目を動かす事しか出来ない。


「まだ起きないでください、三日も寝ていたのですから。今お医者さんを呼んできます」

 そう言ってポエットはバタバタと出て行ってしまった。


(お水、飲みたかったのだけれど)

 水差しがテーブルの上にあるのが見えるが、体を起こすことは出来ない。


 水分があれば話せそうな気がしたが、動くのは億劫だ。

 仕方ないからポエットが帰ってくるのを待ちながら、これからどう復讐するかを考える。


(私も彼を蔑ろにするだけよ)

 内心で彼がどう転ぶか愉しみになる。


 彼が私を大事にするのならば、私ももう一度信じてローシュを大切にしよう。


 でも、彼が私を見捨てるのならば……相応の報いを返すのみだ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る