『Tea of Book』
茶の国の茶葉は魔法のお茶の葉
夜ごと昼ごと
何度も何度も
世界各国の物語を読み聞かされて
完璧になるまで育て上げられる
何度も何度も読み聞かされて
そうして育つ、魔法のお茶の葉
「国王陛下。今年も良い茶がまとまりまして御座います」
「待ちかねた、待ちかねた。新作はいずれか」
「こちらの、薫香あふるる蓮の葉色。
そしてこちらの明かしハシバミで御座います」
「ふーむ。その間にある、栗皮色は既作かの?」
「今回新たに物語を『歌』として語り聞かせた新種に御座います」
「なんと、歌とな! では、では、それを頂こう」
「かしこまりまして」
「このところ、とんと冒険心の足りぬ茶ばかり飲んでおったでな。
ぽんこつでもへんてこでも、とにかく変わり種を欲しておったのよ」
「では、これからもへんてこでぽんこつを探求して参ります」
「うむ。うむ。茶も物語も、時には冒険が必要じゃからの」
「かしこまりまして」
茶の国の茶葉は魔法のお茶の葉
一口含めば、その茶が語り聞かされてきた物語の世界へとご案内
空飛ぶ絨毯、輝く財宝、散々な恋から泡沫の癒しまで
お望みの物語をお望みのままに
そのお腹が物語でちゃぷちゃぷになってしまうまで
お望みの物語をお望みのままに
「次はめちゃくちゃ怖いのが良いのう。弟に飲ませて驚かそう」
「……かしこまりまして」
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『Tea of Book』
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材料
・茶の国でつくられた魔法のお茶の葉
・出来るだけ月光と陽光を同じ時間だけ当てた新鮮な水
効能
・茶を飲んでいる間、物語を見ることができる
・物語に含まれる二次的効能として物語に準じた作用が生じる為、
趣味嗜好と体調にはくれぐれも注意のこと
(怖がりな人に怖い物語を聞かされ育った茶葉を用いたり
恋愛好きな人に大恋愛物語を聞かされ育った茶葉を用いると
飲み終わる前に物語に閉じ込められて廃人になることがあります。
副作用が気になる方はミルクや砂糖で割りましょう。
アツい物語はアイスティーにするのも効果的です)
レシピ
※茶葉自体は茶の国限定の製造方法のため、
先に記した内容以外は伝えられていません。
※茶葉は魔法魔術道具を扱う商店、及び行商人から購入することが出来ます。
・茶葉の大きさに合わせて湯を沸かします。
(泡の大きさは、温度の低いものから
「鳥の目、魚の目、王様の目」と覚えましょう)
・沸いた湯を少しだけ容器に入れて、あらかじめ温めておきましょう。
こうすることで茶葉がしっかりと開き、見える物語の密度が高まります。
・湯を捨て、希望の物語を含んだ茶葉を適量入れます。
物語がより踊るように、高い場所から湯を注ぎます。火傷に注意。
・既定の時間になったらいただきます。
備考
「茶の国でつくられた魔法の茶葉」と偽って売る業者がいます。
本物には包みに茶の国の刻印が記されていますので注意しましょう。
ただし、茶葉は茶葉に変わりありません。
貴重なものですから、偽物だった場合でも、
朝、昼、夕方と好きな時間に楽しみましょう。
複数人を集め、どんな物語かをあえて伏せ、
いっせーので、で茶を飲む会も非常に好まれています。
(この場合は比較的茶の小さな、短い物語のものが選ばれます。
複数人で複数回物語を楽しむことを目的として造られた茶葉だそう)
ただし、効能にもある通り、
決して「飲み終わる前」に飲むことを辞めてはいけません。
一時席を外す程度ならかまいませんが、
飲み終わる前にカップをひっくり返して「おしまい」を宣言してしまうと
飲んでいた茶葉に読み込められた物語の中に取り込まれてしまいます。
その人自身は永遠にその物語を見続ける生きる屍となりたくなければ
中座しても決してカップをひっくり返さないこと。
ソーサーにも、床にも、自身の身体にも、
とにかくどこにもひっくり返さないこと。
(翻訳者注
効能の()内、及び備考の「ただし~」以降は
原本からは意図して削り取られた跡が見受けられましたが
注意喚起、および記録を目的として、
写本数冊を比べたうえで適正と思える内容にて記載致しました)
『魔法魔術料理図鑑』 龍郷舎(龍郷みさき/なかひろ) @MisakiTatsugo
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